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番外編開けてはならないパンドラの箱

「雨なのに?」 「石井さんに新しい長靴を買ってもらったのが嬉しかったみたい」 「まるで遥香みたいだな」 彼がクスクスと笑った。 石井さんと奥さんの千代さんは青空さんの身の上を知り、私たちで良かったら親代わりになるからと、それから何かと面倒をみてくれるようになった。青空さんが譲治さんを誘って週一回は石井農園に通い農作業の手伝いをしている。 「鍬で足を怪我しそうで危なかしくて見ていられないと石井さんが言っていたが、最初から出来るヤツはいない。慣れてくればだんだんと出来るようになる」 彼がすやすやと規則正しい寝息を立てて熟睡する陽葵の寝顔を見てにっこりと微笑んだ。 「掛けてきた携帯の番号を調べさせている。もしまた掛かってきても絶対に電話に出るなよ」 「うん、分かった」 「庭に行ってくる」 布団から起き上がると彼の手が頬にそっと触れてきて。気付いた時にはチュッと軽くキスをされていた。 僕にお客さんが来ているとヤスさんが呼び来た。お昼寝している太惺たち三人を佐治さんに頼んで、誰だろう、どきどきしながら客間に向かった。 「未知さんと実際にお会いするのは初めてですよね。橘さんとヤスさんには日頃からお世話になっています。阿部法律事務所の吉村と申します」 人懐こそうな笑顔を浮かべる男性。【弁護士・吉村朔】と書かれた名刺を渡された。 「吉村は四季の兄の副島の友だちだ。元サイバー犯罪捜査官だった。ねえさんの携帯に不審な電話が来ていると聞いて、乗っ取りの被害にもし遭っていたらそれこそ大変なことになるから、余計なお世話かなとは思ったんだが」 「そんな余計なお世話じゃありません」 慌てて首を横に振った。

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