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番外編恋の吊り橋作戦

「義夫はシェドの教団に財産の全てを寄付すると遺言書を残していた。でもふたを開けてみたら借金まみれで通帳もほとんど残高がゼロ。教団側から丁重に辞退されたらしい」 「本当は相続放棄も出来たんでしょう?」 「弓削もな最初はそうするつもりでいた。義夫には言いたいことが山のようにあるがハツさんにはガキのころ可愛がってもらった記憶があるから、無縁仏になるくらいならちゃんと弔ってやりたいんだと。弓削らしいな」 教団にいるとされる義夫さんたちの娘さんは名乗りすらあげない。親子の縁はとうの昔に切ったからもう娘じゃないから金輪際関わりたくないということなのかも知れない。身から出た錆とはいえ実の娘にも見放され供養もしてもらえない義夫さん夫婦が不憫に思えた。 「パパ、ママ」 一太がドタドタと走ってきた。 「これ行きたい」 一太からチケットを見せられた。 「ショッピングモールでお化け屋敷のイベントか。学校からもらってきたのか?」 「うん。夏休みの宿題セットの袋に入っていた」 「面白そうだな。よし、分かった」 何かひらめいたみたいだった。 「一太、弓削とヤスも連れていこう。あとめぐみたちも。こういうのはなみんなで行ったほうが面白いぞ」 「パパもゆげさんもお化けよりつよいもんね。それに無敵だものね。でもヤスさん大丈夫?お化けが苦手なのに」 「弓削がいるから大丈夫だろう」 「パパ、お化けをやっつけちゃダメだよ」 「やっつけねぇよ。安心しろ」 彼が愉しそうに笑った。

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