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第1話 緋(あけ)に染まる

思えば俺は、最初から彼に囚われていたのかもしれない。 レッドがまだ緋(あけ)と呼ばれていた頃に、友達に連れられて行ったバーで出会った。 第一印象は、可愛い顔をしたビッチ。 たくさんの人に囲まれて笑顔を見せる緋は、とても華やかで明るく見えた。 誰にでも平等に接し、請われればキスをする。 そんな緋に少し引きながらも、なぜか目が離せなかった。そしてふと気づく。明るい笑顔を振りまく緋の瞳の奥に、暗い影が潜んでいることに。 散々飲んで騒いだ後に、バーの奥にある部屋に移動して、数人で緋を抱いた。 俺は鑑賞するつもりでついて行ったのだが、妖艶に笑う緋に誘われて、気がつくとピクピクと震えるいやらしい穴に、俺の規格外のモノを突っ込んでいた。 俺のモノは規格外に大き過ぎて、今までに関係を持った奴らは、一度ヤルと二度とはヤラせてくれなかった。痛くて快感を得るどころではなかったらしい。 俺も痛みを感じて、気持ちよくなったことなど一度もなかった。 だけど、緋の穴に突っ込んだ瞬間、全身に電気が走り、思わずイキそうになった。 なんだ、これ?感じたことの無い強烈な快感…。とても気持ちいい。それに、こいつ…、ちっとも痛がってない…。 緋の最奥に白濁を吐き出して、心地よい疲労に目を細めてズルリと自身を引き抜いた。 その時に見た緋の顔が、笑っているのにどこか寂しそうに見えた。その寂しい笑顔が、俺の胸の中にこびり付いて離れなくなった。 次の週、友達に誘われた訳ではないが、またあのバーに行った。 そこにはやはり、緋がいた。 また周りを数人に囲まれて、近くにいた男の肩に手をやりキスをしようとしている。 気がつけば、俺は緋の手首を掴んで店の外へ飛び出していた。 驚いた顔をして、俺に手を引かれるままについて来た緋だったが、ハッと気づいたように立ち止まり、強く腕を引く。 「なんだよっ、あんた。離せよ!」 「…おまえ、あんな事して、本当に楽しいのか?」 「は?何言ってんの?あんたには関係ない」 「まあ関係ない。けど、そんな目をしてるおまえが悪い…」 「は?意味わか…んぅっ…」 ギロリと俺を睨む青い瞳を見つめ返して、文句を垂れる小さい唇を俺のそれで塞いだ。 柔らかく甘い唇が震えて、俺の下半身が瞬時に反応する。 やべぇ…、なんだこれ?すっげー柔らくて気持ちいい。 俺の胸を押して抵抗していた緋だったが、離してもらえないと分かって諦めたのか、俺の服を掴んで口を開けた。 即座に舌を入れて戸惑うように伸ばされた舌に絡める。 その熱く甘い舌に俺の身体が熱を帯びてくる。薄く目を開けると、涙を浮かべた青い瞳と目が合った。 瞬間、ドクン!と心臓が跳ねた。 見つめ合ったまま、ゆっくりと唇を離す。 青の瞳から、一粒の涙が零れ落ちた。 俺は無意識に手を伸ばして涙を拭う。 「俺は、蒼(あお)だ。おまえがどういう理由であんな事してるのかわからねぇけど、これからは俺が満足させてやる。だから、もうあのバーには行くな。人恋しくなったら、俺を呼べ」 「な…んで…」 「さあ?俺にもよくわかんねぇ」 「…変な奴…。僕は緋(あけ)。この近くに住んでるんだ。来る…?」 「行くよ。その前に腹減ったから、何か食ってこうぜ」 「…蒼って、見た目通り強引なんだね。ふふ」 その時の自然と零れた緋の笑顔が、あまりにも可愛くて、俺は目が離せなくなる。 俺の中に灯りかけていた小さな光が、大きく輝き出した瞬間だった。

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