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第23話 微※

ーー イーノ side ーー 「イー……、ノ! ん……、あぁ……」 「リーフ、しゃま? おはよ、ごじゃましゅ……」 「なぜ、その寝ぼけ方を……、ふぅっ、するんだ……?」 「ぅわぁぁぁぁっ! おれ、また!!」 おれってヤツは!! なんでこんな寝ぼけ方するんだ! うぅ……、毎朝寝ぼけては乳首弄りまくるとか、リーフ様に嫌われたらどうしよう……。 「……イーノ、そんな顔をする必要はない。朝は何もしなくてもこうなるものだろう?」 リーフ様の大きなモノが臨戦態勢になっている。そして昨日、散々吐き出したはずのおれのモノも、しっかり勃ち上がって……。 「今日は出かけなくてはならないから、手を貸してくれ」 そう言って、大きさの違う、けれど同じように固くなったモノを重ね、おれの手にリーフ様が手を重ねて絶妙な力加減で扱かれた。 先走りでヌルヌルだったから、そりゃもう、気持ち良かった!! 浄化してもらって身支度を整え、リーフ様のご家族に紹介される。 エルフ様達の美しさに、異世界に迷い込んだ感が半端ない。まぁ、いろんな意味で異世界なんだけど。 丸い木製のテーブルに並ぶ朝食は妖精ブラウニーが作っていると言う。よく煮込まれたポトフと川魚のソテー、焼きたてのパン、果物、ハーブティー。 「ニンゲン、後で私の研究に付き合え」 「え? 研究、ですか?」 「お断りしたはずです。イーノ、姉上が研究しているのは恐怖心を煽る幻惑魔法だ。付き合ってたら心が壊れる」 「恐怖を煽る……?」 おれはビビリだから怖いものなんて数えきれない。なかでもおれの1番の恐怖はリーフ様に捨てられる事だと思う。それを魔法で見せつけられたら……。 「いや、です。怖い事なんて考えただけで、想像だけで……!!」 「……自分の想像で泣くのか? 使えんな」 「なっ、泣いてません!!」 ちょっと鼻がツンとして目が潤っただけです!! 「我々は干渉しないから、好きなだけ滞在しなさい」 「入られて困る所には全て結界が張ってあるから、入れる所は自由にして構わないわ」 「ありがとうございます! お世話になります!!」 リーフ様のご家族に拒否されなくて嬉しい。 リーフ様が出かける時、郷の境界まで見送り、猩々の討伐に行く他の方々も見送ってからのんびりと食事処に向かった。 ブラウニーが家事をしてくれるから屋台がない。お店らしき建物はあるけど、いまいちなんのお店か分からないし、敷居が高くて1人では入る勇気が出ない。リーフ様に連れてきてもらえると良いな。 ーー リーフ side ーー イーノの手はどうしてあんなに心地よいのか。私はイーノを抱きたいが、イーノはどうなのだろうか? あの子なら私の要求は二つ返事で了承すると思われるので、心配は無用……か? あの手の感触の不可思議さに、探究心が抑えられずなすがままなのもどうなのか。 疑問や反省を頭の片隅に追いやり、改めて家族にイーノを紹介した。 家族の素っ気ない対応を気にする事なく感謝し、ブラウニーが作った朝食を嬉しそうに頬張るイーノ。……和む。 郷の境界でイーノに見送られ、猩々(しょうじょう)狩りに出発した。 猩々の縄張りの印は、我々が浄化で匂いを減らすので、上書きをしに来る。手分けして探し出し、見つけたら皆に知らせて総力を上げて追い払う計画だ。 郷を出て1刻ほどで魔法光による合図が上がり、そちらに走る。見つけたのは能力低下魔法を研究するラオブだった。 「こいつは物理系状態異常無効ですが、ワタシの考案した方法なら速度低下が可能なのです! 筋力低下も多少は効果がでていますが、こちらはまだまだです!」 「依代展開! 拘束罠に誘導する! 北東に向かったら攻撃しろ!」 ラオブは魔力を通しやすい|荊棘《いばら》のトゲを打ち込んで内部に直接能力低下魔法を流し込んでいるのか。姉上は魔石を依代に猩々が嫌うものを幻惑魔法で見せているようだ。 上手く北東に向かわせる事に成功したので、背後から水弾を撃ち込む。水を嫌うがダメージを与える訳ではない。 血の匂いは勿論だが、傷つくと排泄物や臭素を撒き散らすことがあるので、もっと遠くへ追いやらないと困る。我々が森で火を使うときに使う、少し開けた場所に出た。 「炎蛇!」 火属性魔法を研究しているピュロンが蛇のようにうねる炎を飛ばす。水気が邪魔になるだろう、と水の攻撃を止めた。風なら火の威力を増すが制御不能になっては困るので様子を見よう。 『いと気高き火蜥蜴の王よ、彼の者のみを焼き払え!!』 古代言語で祈りを捧げ、火蜥蜴の力を呼び出すのか。火属性魔法が苦手なのはエルフの特性だが、彼はエルフに不得手な魔法が存在することを不満に感じ、それを補おうと研究をしている。 森では高火力の魔法を試し撃ちするのは禁じられているのだから、火山地帯や砂漠地帯で研究した方が良いと思うのだが……。 「うわっ!!」 「未熟者めっ!」 火蜥蜴の火を跳ね返されてしまい、姉上に庇われている。私は木々に被害がないよう、水の壁を作った。 「限界……っ!」 ラオブが力尽き、膝をつく。 能力低下魔法は使用中、魔力を消費し続けるようだ。魔力が効きにくいのは本当に厄介だ。 隙をついて逃げられてしまったので、また明日出直すことになった。

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