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第24話

ーー イーノ side ーー リーフ様を見送り、郷をふらふらと見て回ってからコクトゥーラ様のお店に行った。お手伝いさせてもらえたら嬉しいな。 「こんにちは」 「やぁ、イー……、キーノ? だっけ?」 「イーノです」 合ってたのに!! 「あぁ、そうそう。リーフが連れてきたニンゲンだ」 「はい!」 「食事に来てくれたの?」 あれぇ? ニンゲン向けの料理の研究って言ってたのは社交辞令だったの? 「あ! 思い出した。ニンゲン向け料理の味見してくれるんだった」 小精霊(マールィ)に怒られちゃった、って笑ってる。こんなに綺麗なのにちょっとおっちょこちょいとか、レア! 早速、人間の料理について質問攻めにされた。 「基本は同じだね。熟成の仕方が自然任せなくらいかな?」 「コクトゥーラ様はどうやって熟成させるんですか?」 自然任せでない熟成って、見当もつかない。 「味付けをしてから全体を魔力で包むと熟成が進むんだよ。そして程よいところで魔力を抜き取って保存する」 「魔力で包むんですか」 「そう、魔力を栄養にする微精霊の活動が活発になって……」 微精霊……? ごく微かな魔力を感知できないと存在を感じられない存在? 「何だかいじらしいですね」 「……そう考えたことはなかったな。だがニンゲン達が自然任せで行なっている熟成も、結局は同じだろう。それを魔力を与えずに状態を見ながら調整するのは、かえって難しいんじゃないかな。いつか、森の外に行ってみるか」 楽しそうなコクトゥーラ様にうっとり♡ 「あれ? ちょっとごめんね」 今までなかった紙がコクトゥーラ様の前に置かれている。転送されて来た手紙とか? 「リーフ達、上手くいかなかったみたいだ。郷長の館で話し合いするから僕にも来いって」 「まさかどなたが怪我とか!?」 「それなら僕は呼ばれないから大丈夫だよ」 話し合いが長くなりそうだからお酒とツマミを持って来い、って言われたらしい。おれも連れて行ってもらえるそうなので、給仕のお手伝いをすることにした。 ─────────────────── 「お前、ニンゲンじゃなくてブラウニーだったのか?」 「ニンゲンですよ?」 「ならなぜ給仕なんかしているんだ」 「えっと……、働くのが好きだから、でしょうか」 「変わり者だな」 そうかなぁ? 結構いると思うけど。 「イーノ、姉上はニンゲンの事などろくに知らないから気にしなくて良い」 「何だと? ニンゲンは魔力は少なく、できればぐうたらしていたくて、隙あらばエルフの服を脱がせようとするものだろう」 「それはエスグリです」 エスグリさん……。(涙) 「フォーリャ、欲深くて身の程知らず、を忘れているぞ」 「そんな人は少数派です! ……たぶん」 「ニンゲンの貴族たちには多いな」 「それは……」 確かに貴族はエルフを友人扱い、というか身を飾るジュエリーみたいな扱いをしたがるけど。……ごめんなさい。 「イーノも、叔父上の伴侶もニンゲンだが、悪意がないだろう。客観的事実を無視するべきではない」 リーフ様が庇ってくれたけど、エルフ様たちの小馬鹿にした態度は変わらなかった。まぁ、話には聞いていたけど……、でも。 よし! 身を持って証明しよう!! と、意気込んだものの、ツマミは並べるだけ、お酒は手酌。空いたお皿はブラウニーが片付けてしまう。 「する事がない……」 「帰るか」 おれはリーフ様に連れられてお屋敷を後にした。 ーー リーフ side ーー 対策会議といってもやる事は決まっている。繰り返し攻撃してここは居心地が悪い、と思わせるだけだ。 エルフ達のニンゲンへの態度はだいたいこんなものだが、何故か張り切るイーノ。落ち込まず、良いところを見せようとするのが微笑ましい。 だがする事がないようだ。 明日も今日と同様に出かける事を確認して家に帰った。 「すみません、おれ……、役立たずで……」 「あの場で役に立つ必要はない。イーノは私のポーターだろう」 「そうですが、良いニンゲンもいる、って思ってもらえたら……、翠珠街のハーフエルフ達の扱いがもっと良くなるような気がしたんです」 「何故そうなる?」 「えっと……」 イーノの考えは不思議だ。直接、繋がっていない事象が回り回って改善されてゆくなど、有り得ない事ではないが随分回りくどい。しかも己のためではなく、少し知り合っただけのルーのために? 「よっ、余計なお世話だとは分かっているんです! でも、エルフ様達への憧れは他人事じゃない、っていうかおれだけリーフ様に良くしてもらってるのが申し訳ないっていうか!!」 なるほど、親近感と罪悪感か。 だが。 「エルフによるニンゲンへの偏見は根強いし、すぐに変化するものではない。だが私やコクトゥーラのように興味を持つ者もいる。イーノが焦ることはない」 「そう、ですよね。はい! 焦らず尽くしたいと思います!」 「私以外に尽くしたら妬いてしまうよ」 「ぅえっ!? や、妬いて……?」 からかわないで下さい、なんて狼狽えているのは可愛らしいが、何故本音だと考えてくれないのだろうか。 そろそろ本気で手を出すべきか?

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