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第13話 白斗君達のこれから
「ふーん」
これまでにあったことと、そこから得られた結論を全て報告し終わった直後の、おしゃぶり昆布を咥えた輝名の感想がそれだ。
「ふ、ふーんって、アンタ、他に言う事無いんですか?!」
「えー? 別に……白斗と翡翠君が決めた事なら別に俺はなんとも思わないけど……」
ドライすぎんでしょ、アンタ……。呆れる白斗の隣では、ずっと翡翠が顔を真っ赤にして俯いている。付き合うことになった、と報告している間中ずっとそうしていたから、よほど恥ずかしいのだろう。
「だって俺は、別に白斗が毎日ヘドロちゃんでヌイてるって報告された時だって、」
「わーーっ! なんてこと言うんですかアンタ!」
「ま、毎日、ヌイて……」
「語弊があります! おかずにしていただけですよっ! 怖くないですよ、翡翠君。僕は極健全なネットアイドルオタクですから」
「健全なネットアイドルオタクはストーカーとかしないと思うんだよね〜」
「す、ストーカー……?!」
「輝名、貴様ぁ〜!!」
白斗が輝名の肩を掴んで揺さぶるが、輝名はいつもの顔で「うわ〜」と棒読みしているだけだ。暖簾に腕押し。白斗はため息を吐いて、輝名から手を離した。
「まあいいです。アンタにリアクションを期待するほうが悪い。本題は別なんですよ」
「なに〜?」
「お、お付き合いって……、何から始めたらいいんですか……」
「はぁ〜?」
白斗まで真っ赤になって聞いたのに、輝名は相変わらずのリアクションだった。
「だから! お付き合いって! 何から始めたらいいんですか!」
「知らないよ〜、翡翠君と話し合って決めたらいいじゃない〜」
「ばっか、アンタが彼女持ちのリア充だから聞いてんでしょうが!」
「……あのねぇ、白斗。前からずっと思ってたんだけど、白斗は誤解してんの」
輝名はため息を吐いて、スマホをいじると「ほら」と画面を見せてきた。そこには、白くてふわふわの猫が写っている。
「猫ちゃんですね」
「可愛い猫ちゃんです」
翡翠も覗き込んで、うんうん頷いている。
「これが、白斗が俺の彼女と思ってる子」
「はぁ?!」
「ついでに言うと、オス。俺に彼女なんかできるわけ無いでしょ、人間嫌いだし」
輝名がスマホをポケットにしまいながら、そう言う。彼は幼少期の経験から、すっかり人間に対してドライになってしまった。彼が唯一友人と公言しているのが、白斗だ。その事実のあまりの重さに一瞬クラクラしかけたが、白斗はもっと重大なことに気付いて、わなわな震えた。
「じゃあ……じゃあお付き合いの仕方、知らないんですか……」
「だーかーら、それは2人で探していけばいいでしょ。それもお付き合いのうちじゃないの? 知らないけど」
俺アイス買いに行ってくる。輝名はまたマイペースに買い物に出かけてしまって、部室には白斗と翡翠が残された。翡翠はチラッと白斗を見ては、恥ずかしそうに俯いているし、白斗もドキドキしてしまってどうにもこうにもならない。
「……えーと、……何、します……?」
「お、お付き合い、ですか……?」
「そ、そうです、お付き合いっぽいこと……」
「……手、を繋ぐ、とか……」
俯いたまま聞き取れる限界の声でそう言うのが、またいじらしくて可愛くて仕方ない。ああーーー、翡翠君可愛いよーー、と心の中で叫びながら、白斗は「じゃあ、」と手を差し出した。その手を、翡翠がおずおずと握り返す。きゅ、と掴まれて、愛らしさで胸が張り裂けそうだ。
「あの……これからも、よろしく、お願いします……白斗さん……」
「こ、こちらこそ、不束者ですが……」
ギクシャク挨拶していると、翡翠が顔を上げて、微笑む。その笑顔が最高に可愛い。たぶん、宇宙で二番目くらいに。へへ、と顔を綻ばせていると、「アイス何がいい?」と輝名が部室のドアを開けてきたから、2人は大慌てで手を離した。
おかしな関係のままだったが、2人のそれは、純愛にも似ていた。
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