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プレイは続く?

「よかったよ、日野浦センセ」  まだ快楽の余韻にぼーっとしている有紀の耳元で囁いてやれば、有紀はものすごい勢いでこちらを振り返った。  慌てた様子で目隠しを取ろうとする有紀の手を押さえ、俺は有紀にだけ聞こえる小さな声で続ける。 「本日の感想は後日、お預かりした原稿の感想と合わせてメールさせていただきます」  たとえ声に聞き覚えがなくても、ここまで言えば俺が誰なのかはわかったはずだ。  驚き慌てた様子の有紀を置いて、俺はさっさとステージを降りて倶楽部の出口へと向かう。  脅しとも取れるようなあの囁きを、有紀はプレイの一環だと気付いてくれるだろうか。  この倶楽部は入会の時に身元を調べられ、会員や倶楽部に対する迷惑行為があった場合は相応の報復を受けることを承諾するというかなり怖い内容の誓約書を書かされる。  しかしだからこそ、この倶楽部は安心して遊べる場所で、脅迫めいたやり取りさえプレイとして楽しめる……はずだ。  それにしたって有紀が──日野浦先生が俺のことを彼のご主人様にしてくれるつもりがあるなら、ということになる。  今日のプレイは意外性は出せたし、それなりには楽しませられたと思うけれど、ショープレイとしては普通だったから、日野浦先生のことを満足させることができたかは微妙だ。  自分が楽しみ過ぎちゃったからな……。  日野浦先生の驚いた顔やMとしての素の反応は可愛かったし、躰もすごく良かったから、俺としては彼ともっと深く関わりたいと思うけれど、日野浦先生がどう思ったかはわからない。  まったく、ついこの間マサのことがあったばかりなのにな。  マサにトラブルを起こさせてしまい、Sとしての未熟さを思い知ったばかりなのに、また新しいMと関係を持ちたいと思うなんて、我ながら呆れるしかない。  ……いや、マサのことがあったからこそ、か。  マサは初心者のMだったけれど、日野浦先生はあのよく手入れされた体からして、おそらくMとしてはかなりのベテランだ。  あまり意識はしてなかったけれど、Mとしての有紀だけでなく、昼間会った時の日野浦先生としての年齢を重ねたゆえの余裕のある態度を目にしたからこそ、彼のことがこんなにも気になるのかもしれない。  はぁ……情け無いな。  Sにあるまじき弱気で自信のない自分に思わずため息が出る。  けれどもそれでも、そんな自分のことを日野浦先生が、有紀が受け入れてくれたらと願わずにはいられない。  あの、恥ずかしいことが大好きな、美しくも可愛らしいペットを、俺は飼うことが出来るのか。  それは残念ながらペット本人次第という他はないだろう。

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