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⑯水も滴るーーいい男?
大事な一人娘……じゃないけどさ、息子を他人の言葉で勝手に編入とか決められていいわけ?
胃のムカつきを覚えながら父さんの方を見ると……。
なんだかとてもやり切れないといった、今まで温厚な父さんからは見たことがないくらいの、険しい表情をしていた。
……なんだよ。
そんな表情されたらさ。反論できないじゃないか……。
「…………」
しばらくの間、沈黙が続く中、明るい声を出したのは奥さんの早苗さんだった。
「言いたいこともあるかと存じます。ここはいかがでしょう? 当人同士でお話をされては――」
「そうですね。そういたしましょう」
母さんは早苗さんの意見に同意した。
すると大人たちと俺の格好をした花音も重い腰を上げた。
「詳しいことは月夜に尋ねるといい」
そう言って嘉門さんは座敷から姿を消す。
続いて早苗さん、父さん、花音と部屋を後にする。
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