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⑫嫁? 夫? 同居生活のはじまり

 ……ああっ! すっげぇ、ややっこしい。  なんで祖父さんは川に流れてきた桃を取ろうとしたんだ?  そもそも、なぜ川に桃が流れているんだよっ!!  大きい桃ってなに!?  有り得ねぇだろ昔話じゃないんだからさっ!!  俺がそうやって頭を抱えている間も、月夜は一向に返事をしない。 『意見を曲げる気はない』ってことか……。  同居する当日になって月夜の頑固すぎる一面を発見してしまった。  いや、だからってどうということはないんだが……。  だけどさ、なんというか新鮮な感じがする。  嬉しいっていうか、ちょっと楽しい。 「何がおかしいの?」  月夜が睨むようにして尋ねてきた。  へっ?  おかしい?  何が!?  俺が?  まさか俺が花音じゃないって気づかれた?  そりゃ男の俺が女装なんてしていたらおかしいだろうな。 「えっ?」  うう、心臓がバクバクだ。  動揺を隠せない。  俺は手に汗を握っていると、月夜は目をつり上げてこちらを見下ろしている。

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