61 / 305
⑫嫁? 夫? 同居生活のはじまり
……ああっ! すっげぇ、ややっこしい。
なんで祖父さんは川に流れてきた桃を取ろうとしたんだ?
そもそも、なぜ川に桃が流れているんだよっ!!
大きい桃ってなに!?
有り得ねぇだろ昔話じゃないんだからさっ!!
俺がそうやって頭を抱えている間も、月夜は一向に返事をしない。
『意見を曲げる気はない』ってことか……。
同居する当日になって月夜の頑固すぎる一面を発見してしまった。
いや、だからってどうということはないんだが……。
だけどさ、なんというか新鮮な感じがする。
嬉しいっていうか、ちょっと楽しい。
「何がおかしいの?」
月夜が睨むようにして尋ねてきた。
へっ?
おかしい?
何が!?
俺が?
まさか俺が花音じゃないって気づかれた?
そりゃ男の俺が女装なんてしていたらおかしいだろうな。
「えっ?」
うう、心臓がバクバクだ。
動揺を隠せない。
俺は手に汗を握っていると、月夜は目をつり上げてこちらを見下ろしている。
ともだちにシェアしよう!