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⑨高校生活は前途多難!?
俺はただただ黙ったまま、鏡に写り込んでいる月夜の長い指が動く様を見つめ続けた。
月夜って器用だよな。
やっぱり華道をやってるだけのことはある。
俺があんなに格闘していたリボンは、月夜の手によって綺麗なリボンになっていた。
「はい、できたよ」
ふんわりと月夜が笑う。
その微笑みはけっして俺を馬鹿にしているものではない。
優しい……まるで子供を見つめる母親みたいな……どこかあたたかい笑みだった。
「さ、ご飯食べよう」
呆然としている俺に背中を向ける月夜。
リボンを結んでくれたんだ。
――お礼、言わなきゃいけないよな、やっぱり。
すげぇ恥ずかしいけど……。
言いにくいけど……。
……クイッ。
俺が後ろから月夜の袖を小さく引っ張ると、振り向いた。
「……………りがと」
頑張って言わなきゃと思った声は、だけどそれはとても小さなものだった。
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