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⑧高校生活は前途多難!?

 リボンが俺の言うことをきいてくれない。  どうしても縦結びになってしまうんだ。  思わず漏れた声は予想以上に大きかったらしい。 「花音? どうしたの?」  洗面所のドアをノックする音と、心配そうな月夜の声が同時に聞こえた。 「どうぞ?」  ここで月夜に見られて困るものはない。  自分の姿をざっと確認した俺は、月夜に入室の許可を出した。 「花音、何かあった? ……ああ」  洗面所に入ってきた月夜は俺の姿を見るなり、大きくうなずいた。 「リボン、触ってもいい?」  月夜は縦になっているリボンを指差し、俺の様子を窺う。  俺は、というと――何度結び直しても縦結びになるリボンが恥ずかしすぎて、月夜の言葉にただただ、うなずくことしかできない。  コクン。  俺がうなずいたのを確認した月夜は長い指で器用にリボンを結んでいく……。

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