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⑩思い=想い。

「そうだね。でもね、俺は君がいつ本当のことを言ってくれるのかと心待ちにしていたんだよ。俺は何度も好きだって言っているっていうのに……」  そう言った月夜の手が、俺のカッターシャツを潜り抜けた。  月夜の綺麗な指が俺の肌をなぞる。  あの……花を生ける時に慈しむ優しい指先で……。 「やっ、ちょっと月夜!?」  人が真剣に打ち明けている時に、いったいどこ触ってるんだよ!  月夜を睨めば、彼はクスリと笑う。  俺の素肌を撫でる手つきがいやらしい。  しかもそれだけでは飽き足らないのか、月夜は俺の額にキスを落とした。  ……穏やかな笑みを浮かべて――。 「つき……や」  ドクン、ドクン!  俺の心臓が鼓動する。  俺、月夜のこの笑顔、好き。  優しくて、  あたたかで……。  まるでベルベットに包まれているみたいに柔らかな微笑み。  その笑みを見ただけで、月夜への愛しさが膨らんでいく……。

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