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⑫思い=想い。
苦笑する月夜の口から藤堂 美影 の名前が出たことで、俺の体にあった熱がほんの少し引く。
俺の胸に嫌な予感がよぎった。
彼女は今、どうしているだろう。
彼女の父親と月夜の父親である嘉門 さんと仲がいいって聞いた。
もし……。
もしも、月夜の家族に俺が男だとバレたらどうなるんだろう。
彼女は立ち去り際、嘉門さんに俺のことを告げ口するとそう言っていた。
俺が男だとバレるのはもはや時間の問題だ。
だって彼女は月夜が好きなんだ。
月夜を手に入れるためならアレコレ画策するはずだ。
もし、藤堂が嘉門さんに俺の正体をバラしたら――。
きっと俺は月夜と離される。
月夜は藤堂と許婚の関係になるかもしれない。
そんなの嫌だ。
せっかく両想いになったんだ。
月夜を渡したくない。
でも……。
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