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⑬思い=想い。
俺と月夜は同性だ。
このままずっと、このいびつな関係を続けるのにはかなり無理がある。
月夜は男の俺なんかより藤堂と許嫁になった方がいいに決まっている。
だけど俺は……。
「……亜瑠兎?」
すっかり考え込んでしまった俺は、月夜に呼ばれてはっとした。
「あ……なんでもない……」
「なんでもないっていう顔でもないと思うけれど?」
悲しい気持ちでいぱいになった俺を心配そうに見つめてくる。
俺の苦しみや悲しみを、まるで自分のことのように受け止めてくれる。
月夜はとても優しい人だ。
「月夜は……」
『藤堂と許嫁になりたい?』
そう尋 ねようとして開きかけた唇は、だけどすぐに閉ざしてしまう。
頷 かれるのが怖い。
今はそうじゃなくても、いつかはきっと、俺を選んだことを後悔する日が来るに決まっているから……。
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