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⑭思い=想い。
いつから俺はこんなに臆病になってしまったんだろう。
それだけ失うものが大きいからなのかもしれない。
「うん?」
「もし、藤堂が俺の正体を嘉門さんにバラしたら、月夜はどうする?」
月夜は葉桜家 を継がなければならない。
当然、月夜と血が繋がった子供が必要になる。
だけど俺は男で子供なんて産めない。
いつかは別れなければならないのは目に見えている。
月夜は女性と一緒になる。
そんなの、決定事項なのに……。
それなのに、俺は月夜の口から『亜瑠兎とは別れない』っていう言葉を聞きたいって思っている。
俺って、なんて女々しいんだろう。
月夜との別れの時を考えれば、俺の胸がズキズキ痛み出す。
「彼女とは幼なじみなだけだ。俺は君しか愛せない。父さんが何を言おうと、俺には君が必要なんだ」
ほんとうに?
月夜は本当に俺のことが好きなの?
月夜の本心を疑ってしまうのは、俺にとって月夜が大切な存在だからだ。
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