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②悲しい想いを秘めて。

 そりゃ、ね。  月夜には抱かれたし、俺の全部を見られたわけだけど……。  だからといって恥ずかしいという気持ちがなくなるわけがない。  ――というか、抱かれた後だから余計に恥ずかしい。  だから俺は、怒りながら独りで入れと月夜の背中を押した。  そうして月夜は今、渋々といった様子で入浴しているわけだ。  目の前にあるテレビでは、2人の漫才師が視聴者を笑わせようとボケやツッコミなんかを披露している。  だけど俺はそれどころじゃない。  バスルームから聞こえて来る水音が、『月夜に抱かれた』ということを連想させてくる。  俺の頭の中はどうやったって月夜しかないんだ。  そうやって俺はソファーの上で手近にあったクッションを抱え込み、恥ずかしさに身悶える。  そんな時だった。  ふいに、ローテーブルに置いていた俺の携帯の着信が鳴った。

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