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④悲しい想いを秘めて。
さっきまであった体の奥でくすぶる熱が、一気に引いていく……。
緊張からか、俺の声が掠れた。
きっと藤堂 御影 が告げ口したんだ……。
嘉門さんに、俺が男だっていうことを――。
でなければ、嘉門さんが俺の名前を口にするはずがないから……。
ああ、月夜とのひと時がもう終わる……。
別れの時を思い知らされれば、目尻からは涙が零れ落ちていく。
「話があるんだが、今、いいかな?」
落ち着いた口調。
だけど嘉門さんがどんな気持ちで電話をしてきたのかはわかる。
よくも息子をたぶらかしてくれたな、とか――。
そう思っているに違いない。
きっとすごく怒っている。
ああ、俺。
どうしよう。
どうしたらいいんだろう。
こういう時が来るとわかっていながらも、対処法とか覚悟とか――。
心が追い着いてこない。
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