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⑫『大嫌い』は大好きの裏返し。
「本気で言ってるのか? 俺に抱かれたのも、好きだと言ってくれたのも、すべて金のためだと……? 父さんを脅すためのものだったと――君は……金さえ渡せば、俺でなくとも抱かれたと……そう言うのか?」
月夜は俺を責める。
俺の両肩を掴んだまま、揺らしてきた。
見上げれば、月夜は苦しそうに顔を歪めている。
こんなに切羽詰まった様子の月夜は今までに見たことがない。
俺が月夜にそういう顔をさせているんだと思えば泣きたくなる。
――やめて。
もうそれ以上、何も言うな。
俺は月夜が好き。
月夜だから心を許したんだ……。
この気持ちは変わらない。
永遠に、ずっと――……。
「ああ、そうさ。俺は金さえくれれば誰とだって寝る。目的のものはいただいたし……もうお前に用はないよ」
どうかお願い。
もう離して……。
さようならと、幻滅したと、そう言ってくれ。
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