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⑭『大嫌い』は大好きの裏返し。

「亜瑠兎、君が本当のことを言ってくれるまで手離す気はない」 「……本当のことだ。嘘なんて言ってない……」  月夜に目いっぱいキスをされて心臓がドクドクと大きく鼓動している。  おかげで俺の口から漏れるのは荒い呼吸ばかりだ。  それでも言わなきゃと首を振り、答えた俺の声は震えている。  月夜に酷い嘘をつくのが苦しい。  キスをされた体が熱い。  ……息、できない。  どんなに違うと否定しても月夜とのキスの後じゃ、呂律(ろれつ)がまわらない。  だからせめてと、俺は月夜を(にら)みつけた。  それなのに――なぜだ?  月夜は眉間に皺を寄せ、なんだかとても辛そうにしている。  心配そうに俺を見ているんだ。  やめて。  そんな目で俺を見ないで。  俺を選んでも、月夜にとっていいことなんてひとつもない。  だけど彼女なら――藤堂となら、世間から後ろ指をさされる心配はない。  俺なんかといるより絶対、幸せになれる。

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