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⑤俺だって!!

 花音お気に入りの、レースやらフリルがふんだんに取り付けられている洋服を着なければならないわけで――。 「なん……っだよ、それ……」  俺はがっくりと頭を下げた。  今から月夜を追いかけて、嘉門さんとの約束を守れないことや月夜のことをどれだけ想っていることなんかを話しに行くつもりだ。  だけどさ。  こんな洋服で行ったら、『馬鹿にしているのか』って激怒されそうなんですけど……。  仮装パーティーじゃないんだからさあ……。  嘉門さんと会う前からダメージくらってどうするよ、俺。 「――――」 「――――」  俺は花音の服を着たくなくて、ただ目の前にあるクローゼットと睨み合う。  だけどいつまでこうしていても事態は何も変わらない。 「……最悪だけど、仕方ない」  はあ……。  俺は大きなため息をつくと、ハンガーに掛けられているひとつを手にした。  ――正直、花音の服はどれも同じに見える。

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