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⑩あなたと俺の相愛数。

 きゃく、しつ?  ちょっと待って、早苗さん、客室って?  月夜はどこに行くの?  俺の頭の中は真っ白だ。  おかげで俺は、どうして月夜ひとりで嘉門さんに会ったのか、とか。  どこまで俺を好いてくれているのか、とか。  俺とのことで問題が出た時、月夜が全部の責任を負わなきゃいけないこととか……。  たくさんの、『どうして』を訊きそびれてしまう。  気がつけば、俺は離れにある一室の前にいた。  月夜が俺を抱えたまま、器用に障子を開ける。  ふんわりと、柔らかい布団が俺の背中に当たった。  俺のすぐ目の前では月夜が微笑んでいる。  それだけで、俺の胸がキュンと締めつけられてしまう。 「可愛い俺の亜瑠兎」 「……んっ」  ぼそりと耳元でささやかれ、耳孔に入ってくる甘い息に体が震える。  くすぐったくて思わず肩をすぼめると、月夜の手が着物の合わせ目から忍び込んできた。  えっ?  ちょっと……! 「――月夜? なにを!?」  慌てて月夜の手を捕まえる。

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