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第3話
だが、九十九と佐島の予想に反し、雪柊はその日のうちに幸田にタイマンを挑みあっさり勝利したという。その後、幸田の取り巻きにも囲まれたが、それも一掃してしまった。
先月まで小学生だった少年に負けた幸田の腹の虫が治るはずはなく、次の日、屋上にいた九十九の元に幸田が現れて自分にタイマンをけしかけた九十九に矛先を向けた。
「男なら潔く負けを認めろよ、幸田」
「オレの顔潰されて、黙ってやれるかよ!」
「おめーより、あいつが強かった、それだけのことだろ?これでオレが卒業したら、あいつがここの頭ってわけか」
九十九の言葉に幸田の顔が青くなる。
「な、何⁉︎」
「だってそうだろ?あいつのが強いんだからよ」
「く、くそ……!白石のやろー、絶対潰してやる!」
幸田は悔しそうに拳を震わしている。
次の瞬間、九十九の拳が幸田の顔面にめり込み、幸田は1メートル程吹っ飛んだ。
「そんな事してみろ……ぶっ殺すぞ!」
九十九は倒れている幸田の腹に蹴りを入れた。
「正々堂々とタイマンでやるなら文句は言わねえ。それ以外であいつ潰そうと考えてんなら、オレも敵に回すってこと、忘れるなよ」
そう言ってまた、蹴りを入れた。
「わかったのかよ、幸田」
幸田は九十九の目を見た瞬間ゾクリとした。血の気の引いた顔で幸田は何度も頷いた。
放課後、予想通り雪柊は九十九の前に現れた。昨日と同じく、廊下の真ん中に仁王立ちしている。
「おめー、幸田に勝ったんだってな?なかなかやるな、雪柊」
「約束……守って下さいよ」
雪柊に近づき見下ろすと、
「いいぜ、約束したからな……その代わり、その怪我が治ってからだ」
そう言って、雪柊の頭に九十九はポンッと手を置いた。
「今日でいい!」
荒っぽく手を振り払うと雪柊は言った。
「焦らなくても、オレは逃げねーよ」
去り際にもう一度頭を撫で、九十九は前を向いたまま手をヒラヒラと振った。
後ろで、くそッ!と地団駄を踏んでいる雪柊の様子が見ずとも浮かび、フッ…と笑いが溢れた。
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