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あれからどれくらい経っただろう。
学校で涼ちゃんを見かけることはあったけど、目が合うくらいで会話はなかった。夏休みが明けた今日まで、連絡も、無し。
終わっちゃったのかな。
もういいや、それはそれで。
そうやって自分の中で区切りをつけて、もう3年になることだし、俺は本腰入れて受験勉強に専念することにした。
ひんやり空調が効いてる図書室でセミの声聞きながら参考書を眺める。
廊下からみんなと笑う涼ちゃんの声がした。
瞬時に涼ちゃんの声だと判っちゃう自分がほんとにうざいけど、
声も、匂いも、怠そうな歩き方も、涼ちゃんのことずっと目で追ってたせいで、些細なところに涼ちゃんを探してしまう。
みんなの声から遠ざかって、涼ちゃんが図書室に入ってきた。
「ゆーいと。髪、染めたんだね。」
「う、ん。久しぶり」
後ろから抱きしめるみたいに覆いかぶさってきた涼ちゃんが耳元でぼそっとそう言って、一気に顔が熱い。
黒髪推しだった涼ちゃんのためにずっと暗くしてたけど、なんの反発心か最近明るく染めた。その毛先をいじる指がするっとほっぺを撫でる。
唇が耳に触れてる。いつもの香水の匂いが頭の中いっぱいに充満する。涼ちゃん、もうそんなことしないでよ。
「俺、もうそろそろ帰るから、」
「なあ唯斗」
「な、に」
「お前なんなの?むかつく」
「涼ちゃん、やめ、」
バッグを持って立ち上がろうとした所でぐっとすごい力で肩を掴まれた。冷たい目で俺を睨みつける涼ちゃんに怖くなって目を逸らしたけど、そのまま腕を引っ張られて廊下へ。
普段へらへらしてる涼ちゃんがこんな顔してるのは初めてで、逃げ出したい気持ちに襲われながら手を振り払うことは出来なかった。
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