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涼ちゃんが女の子にモテることも、それなりに遊んでることも知ってたつもりだったんだけど。 あの日は色んなことが重なって、俺の気持ちが落ちてたこともあって、一度連絡を無視したらなんだか気まずい。 なんでもないみたいに連絡したら、きっと涼ちゃんはいつも通りに接してくれるんだろうけど。 でもまたあんな気持ちになるくらいなら、このままフェードアウトしちゃおうか。 考えても考えても答えは出なくて、そんなタイミングで涼ちゃんから電話が来た。 出たら負け。俺の負け。 「…もしもし」 『唯斗、久しぶり』 「ん」 『いまから会える?俺んち、きてよ』 寝起きみたいにかすれた涼ちゃんの声が当たり前に俺の名前を呼んだ。 「ちょっと、今日は用事ある。ごめん」 『ふーん。そうなんだ。唯斗全然連絡くれないし、俺さみしいなあ』 「俺じゃなくたって慰めてくれる子は居るでしょ」 『…はいはい。じゃあまたね』 俺だけのものにしたい。 独占欲だけがどろどろと渦を巻いて、もう前みたいには笑えないって分かった。

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