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悪魔の証明 6

「さっちゃんおはようー」 「おはようございまーす、敬吾さん悲しいお知らせが」 「え、なに」 「なんか……大量のサンプル付きアソート来ちゃってますけど…………」 「え!!!」 がばがばとダンボールを開けては中を改め、敬吾はがくりと肩を落とした。 「なんで今週だよー、水野さん来週だっつってたのに………来週なら時期もんコーナー空くから楽勝ーって思ってたのに………」 「ど…………どうしましょ?」 「出すしかないよなー……。……じゃあ俺棚空けてくるわ……さっちゃん検品頼んでいい?」 「了解です、逸君休憩から帰ってきたら敬吾さん手伝うように言っときますね」 「よろしくー……」 階段の踊り場を回ると、店の端に敬吾が立っていた。 こちらに背を向け、腕を組んで気難しげに何か考えているようだ。 自分が笑ってしまったことにも気づかず、逸は階段を降りる足を早める。 「敬吾さんーー」 「おう、敬吾ー」 その足が、ぴたりと止まった。 「……?おお、後藤」 「久しぶり」 「なんかこの間来たんだって?俺いない時」 「ああ、そーそー」 ーーーー「敬吾」。 桜以外に呼び捨てにされているところは、初めて見た。 「………………」 ふと時計を覗き、他愛ない話を続ける二人の背後を逸は通り抜ける。 カウンターに入ると、幸がぎょっとしたように逸を見た。 「ただいまー」 「おかえり……、どうしたの逸くん」 「え?」 「顔めっちゃ怖い」 「え、うそ。ごめん」 きつく目を瞑ってからぱちぱちと瞬き、逸は改めて幸を見る。 「どう?」 「暗い」 「…………。」 「何かあった?」 「いや……なんでも」 「……そう?さっきアソートの荷物いっぱい来ちゃってね、敬吾さん今場所づくりしてるから手伝ってあげてー」 「………………」 「やっぱ敬吾さん絡みかい」 ラベラーをがしゃんとひとつ打刻すると、幸は逸の背中にシールを付けた。 「……今敬吾さんとこ知り合いの人来てるから」 「妬いてんのー?ただのお友達でしょ」 「そうじゃないけど……」 「けど?」 「敬吾さんのこと呼び捨てにしてたからちょっとイラッとしちゃって」 「ああーーーー、」 叱られた子供のような言い訳がましい口調で呟く逸に、幸は思いの外しみじみと同意するような相槌を打った。 「それはちょっと分かる」 「え、分かる!?だよね!?」 「分かる分かる、なんかやだ。って言うか逸くん敬吾さんのことずーっとさん付けなの?」 「え?そうだよ」 「そうなの?なんか良く分かんないなー、ラブラブなのに他人行儀だねえ」 「えっ、ラブラブ?ですか?」 「にやけないでよ……。機嫌直ったならお手伝い行ってきてー。」 「う……、はい……」 逸が敬吾の元へと行くと、ちょうど後藤が去っていったところだった。 逸が声をかけると敬吾が振り返る。 「手伝いますよ」 「おお、ありがと。……あ、岩井」 「はい?」 敬吾がさりげなく周囲に視線を走らせた。 「今日俺飯要らないから。ちょっと飲みに出る」 「………………」 せっかく上り調子になった逸の機嫌は、また見事に急降下してしまった。

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