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褒めて伸ばして 36

風呂場まで運んでも敬吾は目を覚まさなかった。 少し考えて湯の張っていない浴槽の中に座らせ、シャワーで体を流してやる。 髪も戻してやりたいが、剥離剤を使ったら洗わないわけにも行くまい。 寝ている人間にそれをするのはあまりに剣呑で、結局目を瞑ることにした。 丁寧に体を流すうち、今日は何の跡も付けていないことに気がつき、当然のように鎖骨に口づけ赤く跡を残してやると満足げに逸が笑う。 気を取り直して、シャワーを流しつつたっぷりと体を撫でる。 足の先まで粗方流し終えて、後回しにしていた問題に直面した。 「……不可抗力だよなあ」 また自分がおかしな気を起こさないとも限らないがーー 「……がんばろ」 緩く閉じた敬吾の腿の間に手を滑らせる。 が、比較的きちんと座らせたので接地面が広く、さすがに難易度が高かった。 このまま座面の角度を緩くしようかとも考えるが、頭など打ったらと考えると恐ろしい。 「…………………」 ーー不可抗力だ。 一旦シャワーを止め、敬吾の背中を起こして逸が背後に座り込む。 その狭さに畳まれていく敬吾の脚を、片方持ち上げて開かせ膝を浴槽の縁に掛けた。 敬吾を起こしてしまいそうなほど心臓が暴れている。 「……ごめんなさい」 静かにシャワーを流しながら、それが流れていく先へ逸の指も伝う。 手探りに指先を食い込ませると敬吾の顔が傾いだ。 「…………っ?ん、」 「……敬吾さん?」 「………………」 逸が指を進めると、敬吾の背中が微かに張り詰める。 それでも咎められることはなく、逸はぬるついた自分の不始末をゆっくりと掻き出した。 「………っん、ふ……、」 「敬吾さん……?」 「……ゃ、ぁ…… ーーあっ、」 (……………やばい) 小さく掠れてはいるが、意図的に堪えられていない喘ぎは素直で可愛らしい。 また熱が下がっていくのを感じつつ、逸は指を動かすのをやめた。 敬吾の呼吸が落ち着き、逸もほっと詰まった息を逃がす。 ーーほんの悪戯心で、逸は指を埋めたままにシャワーを置き、胸の先端を撫でた。 「ぁんっーー」 「!!」 弾けて溶けてしまいそうな声と一緒に指が締め付けられ、逸は心臓が爆発したかと本気で危惧する。 そして、完全に勃起していた。 「だ………ダメだダメだこれ以上はほんとマズイ」 それ以上の処理を諦め名残惜しく指を抜き、敬吾の体温を感じたまま、体の隙間に腕をねじ込んで握り込む。 敬吾の首すじを食み、舐め上げながら扱き上げて、満足する頃には赤い跡が幾重にも増えてしまっていた。

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