171 / 280
祝福と憧憬 7
ーー逸の作ったホットサンドは美味かった。
敬吾の好きな蒸し鶏と野菜、苦いチョコレートとアーモンド。
食べ終えた後にコーヒーを飲みながら、敬吾は昨日からの逸のことを考えていた。
ーーあの表情は、なんなのだろう。
押し隠そうとしているようだが見え隠れしてしまう、物憂げで、思慮深いようなーーー
(苦手なんだよ…………)
あの男の、明るくない表情は。
あの日敬吾を陥落させたのもその表情だった。
憔悴して、擦り切れた、震えている子犬のような。
(………なんかあったのか?)
コーヒーを飲みながら目を閉じ考えると、携帯が震えた。
車内も空いているのでそのまま通話にする。
「………なに?」
『サプライズでいっちー来るとかない??』
「ねえよ。」
『あたしそーゆーのちゃんとびっくりできるよ!?』
「安心しろ。ない。」
ともだちにシェアしよう!