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酔いどれ狼 11

「びっっ、……………くりしたなんだよそれ!!」 目も口も愕然と開ききって敬吾が大否定すると、逸はいかにも不思議然として首を傾げた。 「え?なんだよって……焦らされんのとか、ちょっと痛くされんのとかーー」 「やめろやめろ言うな言うな好きじゃねえよ!!!」 ばたばた振られる敬吾の頭を止めながら撫でてやって、逸は今度はその嗜虐心を隠そうともしない顔を寄せる。 「そうですか?じゃあ、すんごい優しくてあまいのとどっちが好きですか?」 「っばか、知らない…………」 「どっちもすき?」 「っあ、もうっーーなに…………」 また突然抉られ、強引に快感の中に引き戻されて敬吾は逸の手から逃げるように首を振った。 餌でも見るようにそれを見下ろし、逸はわざと激しく突き上げる。 「俺はどっちも好きですけど、敬吾さんが気持ち良さそうなのはちょっと強い方なんで……そうしますね」 「ん、っえ、何…………っ逸!や…………!」 もうほとんど何も聞こえないがーー 普段基本的には底抜けに優しい、なんとなれば少々情けない逸に強引に抱かれるのは確かに、不思議な昂揚があった。 自分の意思が物の数にも含まれないほどの熱量で求められ、水や呼吸に近い水準で必要とされているような面映い感覚。 まるで物のように所有されているのだと思い知らされるような、歪んだーー恐らく、歓喜。 それらは否定できなかったーー そしてまさに今現在その只中に飲み込まれてしまっていて、もう何も考えられなくなっている。 自分の鼓動と呼吸があまりにうるさくてーーー 「……敬吾さん、今言って、くれたら俺……甘いのに、しますよ?……………」 ーーどうにかこうにか、希少な精油でも抽出するように絞り出した逸の最後の気遣いも、聞こえなかった。

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