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したいこと? 4
逸はベッドにうつ伏せに沈んでいた。
やってしまった………。
頭の中は、その一言しかない。
かれこれ一時間ほど、砂浜にでも埋められたようにこうして固まっている。
そこへ錠の開く音と足音が聞こえ、さっきまでの鈍重さが嘘のような機敏な動きで飛び起き頭から布団を被った。
「岩井お前っーーー、……………………なにしてんだ」
逸のベッドの上に、 布団の塊が丸まって震えている。
叱りつけてやろうと勇んでいた敬吾を一瞬で呆れさせる滑稽さだった。
「いーわーい!おい!」
敬吾が布団を剥がしにかかっても返事をしないあたり、本気で隠れているつもりなのだろうか。
敬吾はもう笑ってしまっていた。
本当にもう、尻としっぽを丸出しにしてベッドの下にでも隠れている犬そのものだ。
「……岩井!怒ってねーから。出てこいアホ」
「…………………ほんとですか?」
「ぶふっ」
「………………」
と言うか、この男は一体何がそんなに怖いのだろうか。
身体能力ならどう見ても自分のほうが優位だろう。
ーーまあそれも、考えてみれば犬だってそうか……。
布団の上からぱふぱふと軽く叩いてやると、逸はやっとしょげた顔を覗かせた。
「……………本当にすみません………」
「いーよもう、やっちまったもんはどーしようもねえし」
「はい……………」
「九条だったからまだマシだ。言いふらすタイプじゃないしーーってなんでまた俺が慰めてんだよ」
何かあればいつもこうだ。
少々腹が立って軽く頭を張ってやると、やっと逸は敬吾の顔を見上げる。
「…………なんか……………」
眉を下げたまま逸が言った。
「………………お仕置きをしてほしいんですけど」
「ぶはっ」
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