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したいこと? 3

「それただ片思い始まっただけじゃん!」 「えぇー……?もー……とりあえず飯食おう」 角突き合わせてきっちりとしたい話でもない。 レジ袋からパンだのおにぎりだの取り出し、敬吾は眉根を寄せながらむつむつと食べ始める。 「いや……最初はやだったよすんごい……」 「だよねえ」 「なんかもう……すげー押されまくって」 「うん」 味のしないパンを噛みながら、敬吾はやはりむつむつと考えていた。 あれは、何と表現したら良いのだろう。 あの頃の、なにくれとなくざわつく感覚。 言葉にすれば間違いなく否定的なものになる。 嫌だ、怖い、気持ち悪い、理解できない。 だが。 「ほだされたんだよね」 「うん………えっもしかしてまた終わった?」 「終わった」 「ええーー………」 「だって、」 敬吾の携帯が鳴る。 《敬吾さん、ごめんなさい》 逸からのメールだった。 「俺もよく分かってーー」 また携帯が鳴る。 《怒ってますか?》 「………ねえんだよ」 「へえーー……」 「………………」 敬吾はしばし携帯を睨んでいたが、どうやら沈黙したらしい。 口を開いたのは、九条だった。 「恋ってすげー」 「んん?」 異性愛者すら振り向かせるからか。 確かに物凄い熱量だ。 「岩居くんすら盲目にさせる」 「……………んん?」 《敬吾さーーーーん》 《本当にごめんなさい》 《捨てないでーーーーー》 「うぅるっせーーな怒ってねえよお前少し黙って待ってろ!!!!!」 『えーーーーやっぱ怒ってるじゃないですかぁーー……!』 「あっはっはっ!なんなの君らはもうー!」

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