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したいこと? 14

君主への奉仕のように恭しく、丁寧に逸は敬吾の服を脱がせた。 今度は儀式のように厳粛にぽつりぽつりと唇を落とされて、その度張り詰めている自分の方がまるで変態だ。 どうも納得のいかない逸の清廉さに、敬吾は赤らんだ顔を顰めさせる。 どうせ薄っぺらいのであろうその重たい表情を、さっさとひっぺがしてしまいたい。 「いわい………」 「はい」 「なんなんだよ、それ…………」 「……………それ?」 小首を傾げられ、それ、で済まなくなると何と言っていいのか分からなくなる。 最低限具体例を上げないことで敬吾は平静を保った。 「いつも通りで、いーから」 「いつも通り?」 また聞かれてああもうと敬吾が髪を掻きむしる。 「……なんかもっと雑にがっついてるだろ、大体」 「今日はそんな乱暴なことできませんー」 乱暴であることは自覚しているのか。 恥ずかしいほど赤面していながらも敬吾はため息をつきたい気持ちになる。 逸はくすりと笑って敬吾の髪を梳いた。 「気分でもないし……。今日は、しっとり」 「ーーーーー」 「ご奉仕しますよ……、全身」 優しいはずのその言葉が、なぜか不穏で敬吾の口元が引き攣る。 それには気づかなかったようで逸はまた純朴げに目を見開いた。 「あっでも、敬吾さんの希望第一で行きますけどね!ちょっと乱暴なのがいいならーー」 「だからそれやめろっつーの!ほんと汚えなお前は!!」 今度は掛け値なく申し訳無さそうに笑い、逸は敬吾に口付け顔を撫でる。 するすると頬に唇に這う指が、敬吾の警戒を崩していった。 「……本当に、敬吾さんを丁寧に抱きたいだけなんです」 「っ……………」 柔らかいのに真っ直ぐな視線を受け止めきれず敬吾が目をそらすと、逸は困ったように笑う。 「でも、物足りなかったら言って下さいね」 「っだから、そーゆーのっ……」 「うん、ごめんなさい……」 言うなりそっと敬吾を横たわらせて、逸はその喉元から唇を這わせ始めた。 鎖骨へ胸へと優しく落ちていく唇が、輪郭を改めるように流れる掌が敬吾の不満をまた溶かしていく。 どんな言葉で説かれるより、この触れ方でもう、思い知らされてしまう。 逸が心底、大事に繊細に触れようと思っていることを。 それが余りに強く胸を締め付け、いっそ悲しいようで、敬吾は自分の腿を舐めている逸の髪をそっと撫でた。

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