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したいこと? 15

ーーなんだか、付き合い始めた頃のような気分だった。 敬吾のことを偶像か何かのように思っていて、とにかく畏れていて、敬意と尊重をもって触れていた頃。 それは畏怖と同時に粗相をして嫌われたくないという気持ちからでもあったが、かなりのわがままを許してもらえる今になっても遜色ないものだった。 この人に、尽くしたい。捧げたい。誓いたいーー。 そう思いながら愛撫を施す逸の下で、敬吾はもう自我も理性も手放して蕩けきってしまっている。 そこだけは唯一、当時と異なる点だった。 柔らかい谷間の奥を優しくーー執拗にーー舐めても、いつものようには嫌がらず、素直に声を零している。 こんなことは初めてだった。 よく濡れたそこももう、物欲しそうにひくついている。 「敬吾さん、指……入れますよ」 「んっ……………」 今になってそんなことを大真面目に言われる恥ずかしさに、敬吾はきゅっと体を縮めた。 数え切れないほど抱かれて、そんなによく濡らされて、入らないわけがないのに。 それでもゆっくりと挿し込まれた指は、あの熱も質量もないのに手ひどいほどの快感を産んだ。 それまでのように肌の上から染みて行くような柔らかいものではなく、生々しくて直接的で、まざまざ思い知らされる、刺すような快感。 「や……………」 「ああ……、指溶けそう」 あまりに淫猥で粘度の高い音の中で、逸がもう一本増やしますと断る。 敬吾の背中がぞくりと震え、その体が撓った。 頬を緩ませて逸がその通り指を増やすと、小さく喘ぎながらも敬吾はとろりと潤んだ瞳で逸を見た。 逸の呼吸も一気に駆け上がる。 「ーーもう一本……、増やさなくて大丈夫ですか?………」 首を振られてしまうと、どちらの意味なのか分かりかねる。が、手放しに強請るその瞳に逸ももう限界だった。 ゆっくりと指を抜き取り、切なげにひく付くところへ押し入った。 その熱が、もう、焦らされていたわけでもないのに欲しがっていたことを自覚させて、敬吾は泣きたくなる。 感じすぎていた。 「あ………!あ、っ………んぅ……」 「敬吾さん、綺麗……」 「っ逸、んん…………!」 ゆっくりと穿ってやりながら、逸は泣き出しそうなほど顔を歪めて喘ぐ敬吾を見つめていた。 打ち付ける度淫らに溢れる声が、揺らぐ視線が、危なっかしい。 我を忘れてしまいそうだ。 こんな気持ちで抱く敬吾が、こんなに乱れているなんて。 「ふ………、っ?いち、?」 ゼンマイでも切れてしまったようにゆっくりと静止した逸を、敬吾が不思議そうに見上げる。 半端に埋めたままのそこがあまりにいやらしく絡みつかれていて、滲んだ敬吾の瞳があまりに切なくて、逸の意識を引き戻した。 「っあ……ごめんなさい、めちゃくちゃしそうになっちゃって………」 慌てて逸が苦笑すると、敬吾の眉根がきゅっと寄る。 心臓が殊更主張を初めて、急に息が切れる。 甘く柔らかく慣らされた体が、その言葉に反応してしまっていた。 物足りないわけでは決してないけれど、この、ゆるやかに往復していた質量が、硬く鋭く突き上げるあの感触ーー。 体の奥が震えて、恥ずかしくて泣きたくなってしまう。 けれど、もう遅かった。 「いち………、それでいい、から」 「ん………?」 逸の首を抱き寄せたいが、自分の膝が邪魔をする。 自ら股を開くようにその膝をどけると逸が呆然とした顔になった。 そのまま両腕を開かれ、頭を誘われてまた更に惚ける。 嗚咽のような敬吾の呼吸が、戸惑うように長いこと逸の耳朶を擽っていた。 意を決したような呼吸が飲み込まれる。 「……めちゃくちゃしていいから…………」 「ーーーーーー」 頭の奥から腰までなにか熱い激情のようなものが流れて、逸は敬吾を掻き抱いた。

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