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後藤の受難

「岩井くん俺のこと無視してるでしょぉーー」 一昔前のドラマに出てくる不良のように、後藤は妙な抑揚を付けつつ唇をとがらせた。 よくもまあこの混み合ったフードコートの中から自分を見つけたものだと逸は呆れつつ、強引に奢られたシェイクを啜る。 「無視っつーか、逆になんで俺に連絡すんですか……」 「相談があるんですー。まあ敬吾でもいいんだけどさ、嫌でしょ」 「お気づかいどうも」 それなら自分にも連絡はしないで欲しい。 と逸は思うものの、後藤の頓着の無さはそんな考慮など一切眼中に無いようだ。 そう言えば女癖も悪いと敬吾が言っていたし、そもそも人間関係に節操がないのか。 不届きな真似をされなければまあいいかーーと半ば諦めのような気持ちになり、逸は別段困ってもいなさそうな後藤の顔を見返した。 「相談って?」 「ああ、そうだった」 「忘れてんじゃないすか」 ごく気軽に苦笑してみせ、後藤はやはり軽く口を開く。 「なんか俺ストーカーされてるみたいなんだよねぇ」 「はぁ?」

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