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後藤の受難 2
「はぁ?」
寸分違わず、敬吾は逸と同じ反応をしてみせた。
後藤が苦笑し、逸は頷く。
三人は今、夕方のファミリーレストランで飲み物だけを囲んでいた。
「なんだそれ、後つけられたりしてんの?」
「いや、そういう感じじゃない。なんかこう……見られてんなって思うと、視界の端っこにいたりする」
「へえ」
「のが結構あってさー」
後藤は確かに女性にモテる。
モテるが、それは学生時代の話だ。
よほどでなければ、中学、高校くらいのやんちゃな人種は大体モテる。
現在の後藤はーー見てくれは悪くないが、万人受けする類ではなく……下手をすれば遠巻きにされる方だと思うのだが。
そうして敬吾がまじまじと後藤を見ているのを、逸は苦々しく横目で眺めている。
「で……どうしたくて俺ら呼ばれてんの?」
敬吾が本題に入った。
少々の厄介事で、誰彼呼び寄せて大騒ぎしたいタマでもあるまい。
逸も頷くと、意外なほどに後藤は困った顔をしてみせた。
やはり数の中に敬吾が入ると、その他大勢は無条件で「頼る側」に回ってしまうようだ。
その割に、後藤は「ちょっと待ってて」とだけ言って席を立ってしまう。
少々唐突ではあるがーー煙草か手洗いかだろう、と逸も敬吾も気にしなかった。
そうして今回の件について大した内容もない話をしていると、背後から後藤が戻ってきた。
敬吾よりいくつかーーいや、逸よりいくつか年下に見える小柄な男の子を連れて。
「いるんだよね」
「「えっ」」
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