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逃亡、降伏
他の人の着信よりも妙にけたたましく鳴っているような気がする携帯電話。
その着信画面を見ただけで逸は小さく笑った。
「もしもし、お久しぶりです」
『いっちー久しぶり!ごめんねこの間は急に押しかけちゃって』
「いえいえ、楽しかったですよ」
相変わらずの桜の様子に逸がまた笑ってしまうと、その桜も電話の向こうでふふふと笑ったようだった。
『聞いたよぉ敬吾からー、もう水臭いなあー』
「はは、すみません……」
『どうなのどうなの敬吾とは、仲良くやってんの?』
「あはは!お姉さん親父臭いっすよ」
『だって付き合ってるって聞いても全然ピンと来ないもん、敬吾に聞いたって教えてくれるわけないし』
「ですよねえ」
『なにしてんの?二人でいる時って。連休デートとかするの?』
「いやいやまさか。世間の休みは大体バイトですし」
逸の声が少々寂しげに落ち込む。
デートどころかーー
ーーどうもここ数日、避けられている気がするのだ。
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