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襲来、そして 32

「………うぅ」 「敬吾さん?」 「もーやだ」 舌っ足らずにそう言って、敬吾は逸の腿に足を放り出したままぐったりと腕で顔を覆った。 さすがに満喫しきった逸はすっきりした顔で敬吾を見下ろしている。 「こんだけして……っなんで冷めねーんだよもー猿かっ………」 「え、」 嬉しい発言ではあるが、それが敬吾だから流石に異常だ。 質量を失い始めたそれをそっと抜くと、敬吾はまたびくりと震えて何か堪えるように身体を縮める。 「んー……確かにちょっと不思議ですね……痛くなったりしてないですか?」 未だ膨張しているそこを緩く撫でると敬吾は返事も出来ずに蕩けた声だけを垂れ流した。 どう見ても心配なさそうだ。 逸もまた勃ってしまいそうだが………敬吾はすっかり混乱してしまっている。 努めて理性を強く持ち、繭のように丸くなってうつ伏せてしまった敬吾を背中から抱きしめる。 「ちょっとこっち出してみましょうか?出せるかな……」 「んっあっ!ぁーー……やだ、逸ー……」 「ちょっとだけ……我慢ね、敬吾さん」 「んぅーー………」 そこを隠そうとする手をまとめて掴み、大して障害にならない腿や腹を掻き分けながら握り込むと敬吾の体はたまらないようにうねった。 柔らかく尻が擦り付けられる感触ににやけてしまいながら扱き続けると、ほどなく精液が吐き出されて敬吾はそのまま崩れ落ちる。 その項に髪に口付けながら、逸は敬吾が落ち着くのを待った。 「……敬吾さん、大丈夫?」 「……ん………」 「気分どうですか?」 「んん……もうだいじょぶ……」 先までの、発情と言っていいような欲情と度外れた快感はもう無い。 心底安堵して敬吾は逸に向き直った。 「ごめん……、ありがと」 「全然謝るとこじゃないですよ」 面映そうに逸は苦笑し、赤らんではいるものの疲弊している敬吾の顔を撫でる。 「ーーじゃあ、お風呂入りましょうか」 「んーー………」 難しそうにわしわしと顔を撫でた後。 「………悪いけどなんかもうやだ……」 「えぇヒドイ」 全身で感じていた充足感は苦笑いとともにしゅんとしぼんでしまったが、やはり幸せだ。 逸はしばらく、敬吾に叱られない限り好きに撫でて過ごすことにした。 襲来、そして おわり

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