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襲来、そして 31

ーーそれにしてもやはり幸せ過ぎる。 敬吾の望むまま腰を振り、その乱れきった顔を見下ろしながら逸はにやけてしまいそうだった。 あれほど周囲には知られたくないと言っていた敬吾が寄りにも寄って桜に打ち明け、あんなに可愛く抱かれて、挙句自分の寝込みを襲うとは。 血が沸騰するような興奮と幸福感にまた何度も好きだと囁いては、敬吾が泣きそうにそれをやめてくれと懇願する。 そう言われても、言う度敬吾が啼くのだからやめられない。 本心嫌だと思って言っているわけではないだろう。 「あ………っ!!」 敬吾が仰け反り、繋いでいた手を強く握り込まれる。 がくがくと震える体は間違いなく絶頂にあるのだろうが、確かに膨張しきったそこからは何も出なかった。 指の背でそっと脇腹を撫でてやると、痛いのかと心配になるほど過敏に身体を撓らせる。が、喘いでいるからそれほど気持ちがいいということなのだろう。 激しい呼吸を繰り返しながら、敬吾は助けを求めるように横目で逸を見上げた。 意に添ってやりたいとは思うが、まだ堪能させて欲しい気もする。 「……本当に何も出ませんね、今イッたんですよね?」 敬吾はうっとりと頷いた。 あちこち弛緩と痙攣を繰り返す肢体を見ていれば火を見るより明らかだが、聞いて良かったと心底思うほど耽美で美しい。 酔ってしまいそうだ。 「ーーそんなにいつもと違います?」 また頷く。 今度は少し、痛々しい。それもまた綺麗だ。 「……もっと……したいー……」 「…………!!!」 そんなことを言われて逸が暴走しないわけがない。 また激しく攻め立て、綺麗だの可愛いだのと言い募り、逸が次に冷静になったのはまた敬吾が達してやっと、であった。

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