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逃亡、降伏 5
「……良かったのか?友達」
「はい、あんまりテンション上がんなくて……盛り下げてましたしね、俺」
ーーあなたのせいで、とでも言いたいのか?
半歩ほど前を歩く逸の肩を見ながら、敬吾はやや斜に構えた考え方をしてしまう。
なぜこう毎度毎度有難くないタイミングで現れるのだ。犬の勘なのか。
逸は逸で、この人混みなら手を繋いだところで誰も気にしやしないのではないかと呑気に考えていた。
手を引かれるのは御免こうむるが、近くにいる人間は次々変わるので会話は問題なさそうだ。
少し難しい顔をして敬吾が口を開く。
「お前さー……なんか誤解してねえかー」
「はい?」
逸が半端に振り返るが、止まるわけにもいかないのでまたすぐ前を向く。
「誤解?」
「だからー、……またなんかあったんじゃねえかとかー、」
「………………」
街の中心部から離れるに連れ、人影は一気になくなった。
喧騒もまるでシャッターを下ろしたように遠く小さくなり、街灯がぽつぽつ立っているだけの狭い道路で逸は体ごと振り返る。
「そんなことは思ってませんよ」
敬吾に一歩近づき、逸はその指先を握った。
「……単純に寂しかったんです」
「ーーーーーー」
言葉を失った敬吾の指を掴まえたまま、逸は振り返って歩き出す。
曲がり角から人がやって来た途端柔らかく離れる指の物分りの良さがまた、敬吾の喉を詰まらせた。
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