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逃亡、降伏 4

「ーーーーーお、おう……」 油が切れたような動きで振り返りながら敬吾が言うと、逸は実ににこやかな笑顔を向けてみせた。 引き攣り放題の敬吾の笑顔とは雲泥の差である。 「大学、もういいんですか?」 「あ、うんーー」 逸の向こうで友人らしき集団が逸を呼ばわっている。 敬吾に聞こえているのだから逸に聞こえないわけはないがーー呼ばれ続けている当の本人は、相も変わらずにこにこと敬吾を見るばかり。 「ーーよ、呼んでるぞ……?」 「そうですね」 「そうですねって……」 笑っているだけで決して優しくはない逸の顔が、また少し翳ったようになる。 「敬吾さん帰ります?」 「あ、ーーいや、まだ……」 「正直に言ってくれないと」 今度こそは、伝わってくる空気と何ら差異のない冷たい顔になって逸が言った。 「こっから手ぇつないで帰りますよ」 「……………………」 ーートレイを片付けている間。 敬吾は逸が何事か言って連れ達から大ブーイングを受けるのをどんよりと聞いていた。

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