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日常のすれ違い

ピー!ピー! あたまの中で激しく響く警告音 自室まであと数メートルのところまで来てるのに指先も動かせない 廊下の壁にもたれ何とかバランスをとり立っている状態だ 『強制スリープモードへ移行、再起動は6時間 後』 電子音声と同時に全ての機能が停止していく もちろん光学迷彩機能も停止し誰の目にも認識されることになる 「あぁ戦闘中でなくてよかった」 クリスタルはみんなに迷惑は掛けられないと そんな事ばかりを考えていたが直ぐに思考も停止した そしてゆっくりと瞳を閉じた 全ての機能が停止し 膝から崩れ倒れるクリスタルをグレーは抱き止める 「こんな時にしか君の姿を確認できないなんてね  光学迷彩機能を壊してやりたくなる」 いつもはクールで落ち着いたグレーの顔が今は寂しく見える 「君に会えないのは悲しいよ」 呟いた言葉はクリスタルには届かない 無機質なただの人形となったクリスタルを抱き上げ 部屋まで運んだ ベッドに降ろしたクリスタルを見て 「意識の無い君を抱くのは止めておくけど  このくらいは許されるだろ?」 そう言ってそっと唇を重ねた クリスタルは全身義体だがその唇は 柔らかく温かく生身の人間と変わらなかった 「おやすみクリスタル  君は俺の…俺だけのものだよ」 そしてグレーは 灯りを消し静かに部屋を出た

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