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プロローグ

 それは、三ヶ月前。  卒業式、当日。  生徒会室でのこと。 「……ごめんね」  整った顔に、銀縁の眼鏡を掛け。  腰の辺りまで長く伸びた黒髪を、一つに結んだ男子生徒。  夜船(よふね)南斗(なんと)は、静かにそう呟く。  それを聞いて、(とばり)(さち)は……眉を、動かした。  けれどそれは……夜船が気付かない、ほんの少しの変化。 「幸君の気持ちは、嬉しい。だけど、ごめん」  夜船に少しでも近付こうと、肩まで髪を伸ばし。  必要なんかないのに、黒縁の大きな伊達眼鏡で、少女のような顔を隠して。  そんな帳にとって、悲し気な表情をしながら発せられた、夜船の呟きは……。  胸の中で育て続けた初恋を、跡形も無く打ち砕くのに……十分すぎるものだった。

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