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エピローグ * ~了~

 それは、三ヶ月前。  卒業式当日。  生徒会室でのこと。 「痛っ! いたい、せんせ……あッ」  不破は生徒会室で、誘われるがままに一人の生徒を犯していた。  生徒会室に並んだ机に生徒を寝そべらせ、ズボンと下着だけを下ろして、行為に及ぶ。 「あッ! 痛、う……痛いヤダ、うぅッ!」  不破を誘ってきたのは、生徒の方だ。  てっきり経験があるのかと思って挿入すると、生徒は処女だった。 「ヤダ、痛い、いた……ッ! 痛っ、やッ!」  拒絶するような言葉ばかりを、口にするわりに。  その生徒は不破の背中に手を回したまま、離れようとしない。 「帳、やめるなら――」 「やめないでッ!」  生徒の名前を口にして、不破は行為の中止を提案しようとする。  だが生徒……帳は、聴く耳を持っていない。 「やめないで、下さい……! お願い、します……ッ、忘れたいんです、だから……ッ!」  不破は生徒会室に寄る前に、暗い表情をした卒業生に会っていた。  それは前生徒会長、夜船だ。  いつも笑みを絶やさず、自分が弱っているところを他者に見せたことが無かったであろう夜船の、暗い表情。  教師として放っておけるはずもなく、不破は声を掛けた。  夜船の話はこうだ。  今まで想定もしていなかったことを、ある人に言われた。  気付いてあげられなかった自分が、情けなくて。  それと同じくらい、相手に申し訳ないことをしてしまった……と。  その話と、今ここでなにかを忘れようと躍起になっている帳を関連付けるのは、早計だと思うだろう。  それでも、そう思ってしまうだけの素材を、不破は持っていた。  入学式の日から、ずっと。  ――帳を見続けていた不破だからこそ。  帳がどれだけ、夜船に懐いていたのかを知っている。 「お願い……先生、動いて……っ」  辛そうな顔をして、口では悲鳴をあげているくせに。  帳は、不破にしがみつき続けた。  自分がここで帳を抱いて、なにが解決するのか。  不破には、分からない。  そうは理解していながらも、頭の片隅にある僅かな懸念が、不破の体を突き動かした。 「……ひ、痛ッ! あぁッ! 痛い、あッ!」  もしもここで、不破が帳の願いに応じなかったら……。  ――帳は不破ではない誰かに、同じ願いをするのではないか。  そうなるくらいなら、自分自身で帳を苦しめる方がマシだ。  その決意だけで、不破は帳を犯す。 「イヤだ、ヤッ! 先生、せんせぇッ!」  男性器を受け止める準備をしていない帳の体は、キツく不破の男根を締め付ける。  状況がどうであれ、触れたいと思っていた男を抱いているのに変わりはない。  不破は力強く、帳を抱き締めた。 「あ、アァァッ! うぅ、く……ッ!」  初めて男に種付けされる感覚に、帳は身体中を震わせる。  決して、心地良いことではないはずだ。  それでも帳は、涙一つ流さない。 「はぁ、はぁ……ッ、せん、せ……っ」  熱を注ぎ込み、それからゆっくりと男根を引き抜くと、帳は呆けた顔で不破を見つめる。  けれど、その目は不破を見ているようで、見ていなかった。 (帳……っ)  この行為に……初めから意味なんか、無いのかもしれない。  それでもいつか、帳が失恋の痛みを受け止められる日がくるまで。  不破は、帳の願いに応じ続けるだろう。  その時期がきたら、最初に気付き。  自分が次の、恋愛対象となる為に。 【同じ色じゃなくていい】 了

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