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第7話 可愛イ茸ハ君シカイナイ

 写楽がキレ気味に教室に戻ってきたら、遊の姿が無かった。弁当は食べかけのものが二人分、机の上に放置されている。 「あれ?あいつどこ行った?」  まさか自分を追いかけてトイレに行ったんじゃないだろうなと思い、写楽は一瞬蒼褪めた。遊の名前を呼びながら自慰をしていたのに、本人に聞かれていたら軽く死ねる。 「犬神君ッ!」  突然、またも写楽が見たことのない遊と同じくらい地味な生徒が血相を変えて写楽を呼んだ。 「あぁん?誰だてめぇは」 「去年からおなクラの雨宮(あまみや)だけど!――さっき梅月君が3年の怖そうな先輩に連れてかれちゃったんだよ、助けてあげて!」 一瞬、目の前が暗くなった。 「どこに連れて行かれた!?」 「多分3年生の教室だと思う」 「分かった。ところでテメーは遊の何だ?答えによってはテメーからブチ殺す」  写楽は雨宮を睨みつけたが、雨宮は全く怯まずむしろ興奮した様子で写楽の質問に答えた。 「なんて理不尽な攻め様なんだ犬神君、だがそこがいい!俺は犬神君と梅月君がちょっといい感じだな~と思って教室の隅でコッソリと萌えていた、ただの腐男子モブAだよ!」 「お、おう……?」 「さあ、早く梅月君を助けに行ってあげて!」  妙なことを口走る雨宮の存在も気になるが、今はそれどころではない。 写楽は遊を救出すべく、3年の教室へと向かった。 *  一方遊は、3年の教室で写楽に恨みを持つモブ先輩に脅されていた。 「てめえ、犬神の恋人らしいじゃねぇか」 「え?違いますけど」 「え?」 「いったい誰がそんなこと言ってるんですか?」 「2年の朝比奈だけど」 「そうですか、朝比奈君の勘違いです。僕の方は本当に犬神君のことが好きなんですけど……僕、嫌われてるんで。地味キノコ殺すぞって何度も言われて……だから僕は犬神君のために死んだ方がいいのかもしれません。でも自分で死ぬのは怖いので、僕を殺してもらえませんか!?」 「うわあ何こいつ怖っ、ある意味犬神より厄介なんだけど!」  遊がモブ先輩に詰め寄りかけた、その時。 「遊―――ッッ!!」 「おぶッ!!」  写楽は3年の教室に突入しながらモブ先輩を蹴り飛ばした。モブ先輩は血を吐きながら数メートル吹っ飛び、画面の外に消えた。 「い、犬神君、どうして……!?」 「馬鹿野郎!死んだ方がいいとか何言ってんだよ!!俺はお前のことが、す、すす、す、しゅきなのに!!」 「えっ」 「地味キノコっつったのは悪かったよ……でも俺はてめーのこと、世界一可愛いキノコだって、本気で思ってるんだからな!」  写楽は顔を真っ赤にして途中噛みながらも、ついに遊に告白した。  遊は、感極まって涙を流している。 「犬神君……僕、嬉しいよ!」 「これで俺達、恋人同士だよな?」 「うん……!」  いつの間にか教室には朝比奈と雨宮がいて、拍手をしながら二人を祝福していた。 周りの三年生は、お前ら全員二年の教室に帰れよ……という抗議の視線を送っているが、抱きしめあい熱いキスを交わしている写楽と遊には届いていない。 (高校生活なんてツマンネーことが3年間毎日続くだけだと思ってたけど……案外悪くねぇんじゃねぇか?)  写楽の薔薇色の新生活は、ここから始まる。 ガチ恋!!!【終】

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