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第6話 君ト恋人ニナレタラ
写楽が聞いたところによると――全て朝比奈が無理矢理クラスメイトに聞きだした情報だが――遊は母子家庭で、家計を手伝うために中学の頃からバイトをしているらしかった。
「だから学校が終わるといつもソッコーで帰るんだとよ。部活にも入ってないからあんまり仲のいいダチもいねーみてぇだし、ああ見えて苦労してんだなァキノコ」
「そうだな……つーかキノコって呼ぶな」
「じゃあ、遊ちゃん」
「はァ!?俺も呼んだことねぇのに勝手にちゃん付けすんなよ!殺すぞ!」
「じゃあなんて呼べばいいんだよ」
「普通に梅月でいいだろ」
「んじゃ、梅ちゃんって呼ぶか」
「だァかァらァ、勝手にあだ名付けてんじゃねぇー!!」
「ああもうこの子めんどくせ~!」
不良のくせに成績は常に上位をキープしている写楽が恋をしただけでこんなにバカになるなんて、恋とはかくも恐ろしいものなのか……と朝比奈は思った。
すると、写楽がぼそっと呟いた。
「バイト……あいつ俺の世話係とかやんねぇかな?そしたらバイト代弾んでやんのに。俺の小遣いを横流しして」
「同級生が雇用主とかさすがに無理あんだろ、おめーはいったいあいつの何になりたいんだよ?」
「は?そりゃあおま……キスしたりとか、手を繋いだりとか、せ、セックスしたりとかそういう関係だよ!」
「そういう関係を、世間では恋人と呼ぶンだよ」
「恋人……」
なんて素晴らしい響きだろう、恋人。
遊と恋人同士になれたら、どんなに毎日が薔薇色に輝くことか。
想像しただけで胸もお腹もいっぱいだ。
「いや、だからお前らは既に両想いだっつーの……」
もはや突っ込む気も起きない朝比奈だった。
*
次の日。
「はいっ、どうぞ、犬神君」
「は……?なんだよこれ」
昼休み、今日こそは遊に告白するぞと気合いを入れて後ろを振り向いた写楽の前に、遊が巾着袋を二つ取り出して見せた。
「お弁当。昨日美味しそうに食べてくれてたから犬神君の分も作ってきたんだ。あ、別に無理して食べなくてもいいんだけど!勝手に美味しそうだったとか思ってごめんなさい!僕の目が狂ってただけかも「食べる」
写楽はボソッとそう言って、差し出された弁当を黙々と食べ始めた。嬉しすぎる上に美味しすぎて涙が出そうなので遊の顔が見れない。しかし、視線は感じた。
「てめぇ、何ガンつけてやがんだよ!!」
「ごめんなさい!不味かったらどうしようって思ってぇぇ!!」
「マズイわけねぇだろボケ!!てめーも食ってみやがれ!!」
「あ、ありがとう!僕は今朝味見した時点で食べてるけど……!」
「味見?」
「これ、全部僕が作ってるから……」
ぽっと顔を赤らめてはにかんで笑う遊を見て、前触れもなく写楽の写楽が元気になってしまった。
「……!!」
「あれ?犬神君、少し顔が赤いけど大丈夫?」
「う、うるせえェェ!!ちょっとトイレ行ってくっけど俺の分の弁当食べたら殺すからな!!」
「ひゃああ、わかりましたぁぁ」
写楽は前屈み状態でトイレに向かった。
(クソックソッ!なんなんだあいつは、手作り弁当とか俺を殺す気かよ!つうか笑った顔初めて見た!可愛すぎだろーが!俺にあんな顔するなんて、あいつは馬鹿なのか!?俺に犯されたいのか!?ああああ遊可愛い可愛い好きだぁぁッッ!!)
写楽は個室にて、触ってもいないのにギンギンに勃起している息子をもどかしい手つきで取り出し、高速で擦りまくった。
勿論オカズはさっき見た遊のはにかんだ笑顔だ。軽く5回はイケそうな気がする。
「はあはあはあ、遊、ゆう、くそかわ……ッ」
すると、突然隣の個室からコンコンとノックされた。
「おい写楽、あんま長ェとウンコだと思われっからさっさと終わらせろよなァ」
「はあ!?朝比奈!?てめえこんなとこで何してんだよ!!」
「何ってウンコだけど?」
「くっ……そのまま一緒に流されちまえ、このクソ野郎ーー!!」
写楽は朝比奈のせいですっかり萎えてしまった自身を乱暴に仕舞うと、隣の壁をガァンと思いっきり蹴りあげてからトイレを後にした。
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