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第13話
「学会、お疲れ様でした。博士」
スウェーデンから帰ってきた蘭を、一条が飛行場で迎える。飛行機からは蘭が降りてきた。
「ただいま、草太くん。いや、草太博士と呼んだ方が良い?」
「何ですか? 草太博士って……」
せめて一条博士でしょう、と溜息を吐くと、研究室へと向かう「博士」と呼び止めた。
「ん?」
白に近い明るめのグレーの小さな飛行場。植物園のように、様々な植物の持つ緑で囲まれていた島。
それに、かつて理性殺しと恐れられたバニラ・クピディタスのように青い色をした空。
「ずっと聞いて欲しかった事があったんですけど、聞いてもらえますか?」
それは10年越しの告白だった。
いつか伝えたいと思った蘭への思い。伝えたいと思っていたけれど、軽々しくは口にできない世界で最も優秀で、最も孤独な植物学者への思い。
「何? 嬉しい事だったら良いな」
髪も肌も白衣も真っ白い中、その目だけが黒く、優しいものを帯びて、一条に向けられる。
一条はかつて、蘭の特別な関係だっただろう芦田ではないし、芦田にもなれなかった。
だが、その芦田にも負けない存在になれたのではないか。一条はそう思うと、ゆっくりと口を開いた。
「俺、ずっと……」
『バニラ・クピディタスの副作用における
抑制剤の開発について
蘭・L・一国
一条 草太 』
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