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「ねぇ、かいちょー」 俺が通う九龍(くりゅう)学園の3大イベントの1つである学園祭も終わり、鬼のようにあった書類が減った7月の中旬。あと1週間もすれば長期休みに入るこの時期、夏を告げるセミの声が室内に響き渡る。 「なんだ、(よう)」 28度に設定されているエアコンの羽根が休む暇もなくウイーンと動く。そんな少しだけ暑い生徒会室で、室内にいる役員と目の前にいる会長に俺はとんでもない爆弾を落とした。 「俺かいちょーと別れるね」 ちょっとコンビニ行ってくるくらいのノリでニコニコしながらとんでもないことを言う俺に会長だけでなく他の役員も目を見開き固まる。 「みんな面白い顔してんねー」 それもそうだ。俺とかいちょーがお付き合いしているのは全校生徒が知っていて、いわゆる公認カップル。誰がいてもどこにいてもイチャイチャするバカップルだったのだ。けれど、俺はもうかいちょーと付き合うつもりなんてなかった。 「羊、何を言っているんですか!」 すぐに我に返ったのは副会長である早見( はやみ)紗綾( さあや)───通称さあちゃん。真面目敬語紳士なさあちゃんが慌てるのも無理はない。かいちょーと付き合う前、さあちゃんはよく俺の相談に乗ってくれていたのだ。三度の飯よりかいちょーが大好き、な俺が別れ話をするなんて思ってもみなかったのだろう。 「もうかいちょーと付き合ってられないの。ごめんね、みんな」

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