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6-2 LHRでの語らい
俺には半年前からつき合ってる彼女がいる。バーチャルじゃなく、ちゃんと生身の。
だけど。
偽装の恋人関係だから、話題に出されると困るんだよね。
ボロを出さないように。あとで忘れるような嘘をつかないように。よけいな情報を与えてはならん。かといって、いつも素っ気なく流しててもマズい……。
めんどくさいけど、彼女に一途な男になり切るんだ委員長!
「いや。全然飽きないよ。ほかの女に興味ないし」
「ふーん。セックスも? マンネリ化してない?」
「俺も彼女も満足してるから。問題ないかな」
「そうお? 聡 じゃないけど、僕も1から120まで丁寧に教えるよ?」
120!?
そのよけいな20がマニアックそうで嫌だ。てか、普通1から10までだろ。一桁多いとこに内容の濃さが窺えて怖い……。
じゃなくて!
「凱 じゃないけど、俺も今は男とはやらない」
「……凱? へぇ、仲良くなったんだね。柏葉くんと」
彼女の話をクリアしたと思ったら、次はそこツッコむの?
今日の玲史 はなんか手強いな。
もっとフワフワ行こうよ。その頭みたいにさ。
「昼にこの学校のこと教えただけ。そしたら、柏葉より凱って呼んでくれって。あと、必要なアドバイスもしたよ。俺は委員長だし、凱が人見知りかもしれなかったから。まぁ、全然そうじゃなかったけど」
何言い訳してんだ俺。
凱と親しくなったって別に問題ないのに。小泉に頼まれたのみんな知ってるんだし。素の俺がバレるわけじゃないし。
面白そうな瞳で俺を見つめる玲史から、必死に目を逸らさないようにする。
ここで逸らしたら、やましいことありますってなるじゃん? きっと。
玲史の観察眼は鋭いからね。
ガンバレ!
たっぷり10秒後。
やっと視線での真偽判定が終了した。
結果は俺に知らされず。
「ふうん。柏葉くん!」
玲史が立ち上がって大声を上げた。
ワイワイとした話し声が止む。
「はーい?」
答えてから、凱は自分を呼んだ声の主を教壇に見つける。
「僕は玲史。僕も凱って呼んでいい?」
「いーよー。よろしく、玲史」
凱はニッコリ微笑むと、クラス中に目を向けた。
「みんなもねー。セックスの相手はしねぇけど、ゲイの友達も大歓迎だからさ。よろしくー」
初対面時の名前オンリーだった自己紹介から一転。愛想良く話す凱に、ざわめくクラスメイトたち。
すでに性指向の話で盛り上がっていた凱の周囲は、いっそう和やかムード。
「凱。ナンパ行こうぜ。うちの女子部、いい女揃ってるよ」
「エロなしでいいから今度遊ぼうね、凱くん」
「あーお前を女にやんのはほんともったいねぇな」
「今彼女いる?」
離れた席では、あらためての感想が飛び交う。
「へーあいつノンケなんだ。男にモテそうなのに」
「軽いのは苦手だよ。正親 と同類なら俺とは合わないな」
「明るいけどなんか凄みを感じるんだよね。裏があるっていうか」
「一度やられたらすぐこっちに転ぶんじゃね? 誰かしら目つけんだろアレじゃ」
「女子部行けば即彼女出来そう。ノリいいし」
「彼女よりも早く彼氏作ったほうがいいって忠告しろよ」
耳に入るコメント群に苦笑する。
みんな言いたい放題だな。
でも。お見事、凱。
あっという間に、チャラ男キャラで馴染んだじゃん。
女子部っていうのは、この蒼隼 学園と同じ大学付属の女子校、緋隼 学園の高等部のこと。中等部はうち同様、人里離れた山の中にある。
その女子部の校舎はここから大通りを挟んだところにあって、門の前に公園みたいなスペースが造られてる。そこが主な交流場所だ。
「凱……か。確かに興味深いな」
「ちょっと、紫道 。凱に抱かれる前に僕でしょ?」
「玲史……お前の見方はどういう基準だ? 人が見かけに依らないのはお前で十分わかってるが、凱と俺で何で俺がネコなんだよ」
「凱もネコっぽいけど、紫道のほうが僕にはそう見える。攻められるの好きでしょ?」
「好きじゃない。痛いのは嫌いだ」
「でも、焦らされて我慢して懇願して、耐えられないくらいの快感を得る……ほら、想像してみて?」
「何言ってんだ……」
瞳を泳がせる紫道。
「そういうの期待するだけで感じるタイプだよ、紫道は。きっとハマるって」
「……勝手に言ってろ」
あーあ……そこで顔背けると、肯定にしかならないのに。
でも、背けないままでも肯定になっちゃう顔してるんだろうな。
すでに軽い羞恥プレイだろ、これ。
同情するぞ。紫道。
それにしても。
今まで考えたことなかったけど、紫道が受け……これはまさしくギャップ萌え。
あ。このカプいいかも。
頭の中で腐男子が活発化し始めたところで。
「將梧はどっちかなー……」
え? 矛先俺にチェンジ?
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