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★10-2 イク時に呼んだ名は【注:NL】

「すぐ準備するから少し……うわっと!」  深音(みお)が俺を挟んだ両膝に力を入れ、腹筋を使って起き上がった。 「私にやらせて」 「何……?」  深音がそろそろと俺のペニスに手を伸ばした。  ゆるりと握られたそれがピクッと跳ねる。 「1回育ててみたかったの」 「待……深音! やめ……くっ!」  制止する間もなく。  膝立ち状態の俺の股間に顔を埋め、躊躇なくペニスの裏筋に舌を這わす深音。ゆっくりと先端まで舐め上げると、亀頭にキスをした。 「私も將梧(そうご)を感じさせたい」 「いや、でもお前……男の、平気なの……?」 「うん。私もバイなのかも」  そう言って上目づかいで微笑む深音は、果てしなく色っぽいと思う。 「っう……っあ……っ」  大きく開けた口の中に俺のペニスを含み、ぎこちなく舌を絡みつける深音。  適度にやわらかく。適度に硬くて生温かい舌が、生き物のようにまとわりつき撫で回される初めての感覚。おまけに、不規則なタイミングでジュっと音をたてて吸いついてくる。 「っあ……っ! く……っ!」  必死に声を抑える。  何コレ!? すげー気持ちいいんですけど……!  今まで。誰かにここを舐められたことなんて、もちろんない。  自分の手以外で抜いたこともなし。専用ツールとか他用途の道具とか使うヤツもいるけどさ。俺はそんな凝ったオナニーなんかしたことなくて。  フェラするのが初めての深音の舌使いでも、十二分に気持ちがいい。  初のフェラチオの快感で、半勃ち状態だったペニスは瞬く間に完勃ちに。  当然、それを咥えてる深音はその成長をリアルに感じてるはず。  そして、自分がそうしたことに気をよくしたのか。軽く握ってただけの手に力を加え、シャフト部分を上下に扱き始めた。  同時に、先端を重点的にジュパジュパと吸われたらもう……! 「ストップ! これ以上されるとマズい」  言いながら、乱暴にならない程度に素早く腰を引き。深音の口と手から離れる。 「今日も、あんまり長く保たないかも……」  情けないけど先に宣言。  初体験の時は。  とにかく『ちゃんと挿れられるように』を目標に、数日間オナニー自粛で挑んだ。そのおかげで、ちょっとの物理的刺激でしっかり勃ってコトを成せた……すぐ終わるほどに。  だけど、今日は……突然の予定外で。  心の準備はともかく、溜めてないから勃たなかったらどうしようと思ってたのにさ。  視覚的な刺激は微妙でも。未知だったフェラの刺激に、すでにフル充電だわ。  深音を止められた自分を褒めたい。よく我慢したな!  ただ。  すぐにイケる状態なのは変わらないわけで。 「ちょっと落ち着かせて……」 「嫌!」  飛びついてきた深音が俺の首に手を回してグイッと引き寄せ、そのまま後ろに倒れ込む。  慌てて両手を突っ張って、深音を潰さないように上体を支えた。 「私も……もうイキたいの。早くきて」 「俺もだけど……あ! ゴム! つけなきゃダメだろ。待って」  深音がシャワー前に枕元に用意していったコンドームの袋に手を伸ばし、中身を取り出した。  ヌメリのあるラテックスをクルクルと装着しながら、昂った気持ちを抑えようとして誤った。  意識を手元に集中するあまり、つい思い出した女子部を去り際の言葉。 『ちゃんとゴムつけろよー』  佐野の声だった。それに連動して、あそこに一緒にいた男子女子の面々を思い出す……当然、涼弥のことも。  マズい。  男、思い浮かべちゃダメだろ! 萎えたらどうする!  そんな心配は無用とばかりに、さらに(たぎ)りかける気分とペニス。  ヤバい!  もっとダメ……!!!  ゴムをつけ終え、急いで深音の上に上体を屈めた。  よけいなこと考えるな!  忘れるんだ。  今は気持ちいいことだけに集中しろ……! 「キスして……」  トロリとした瞳の深音に乞われるまま、唇を重ねる。  さっきみたいな性急なキスじゃなく、ゆっくりと。  一度目のセックスの時以来、特にしたいと思わなくて。今日……さっきまで、デートでキスはしてなかったけど。  気持ちいいなーキスって。  唇を舐め合って、舌を絡める。  軽くしようと思ったのに。すでに快感で高まっている身体は激しさを求め、お互いの口内を蹂躙し合う。 「挿れて……」  深音が俺のペニスに手を添えて、自分の濡れた入口にそっとあてる。 「力抜いて、痛かったら言って」  今度こそゆっくりと、深音の中に少しずつペニスを沈めていく。 「あっ……ん、っん! んふ……ああっ……!」 「っつ……!」  すごい……キツ……真空パックにされるハムとかウィンナーの気分ってこんなかも……。  あー……でも気持ちいい。  前は、ここでもう耐えらんなくて。ガンガン腰振ってすぐ終了。  とにかくイキたい出したいだけだったから……。  今回はもっとちゃんとやろう。やれる……はず。  根元まで入ったところで、俺の背中に回した指先に力を入れる深音。 「大丈夫?」 「う……ん、痛くないから……中、いっぱいで、苦し……でも動いて、大丈夫……」  深音の肉にギュウと押し包まれてるだけで高まる快感は、弾けるのに大して時間はかからなそうだ。  そして、抜き挿しし始めたら、たぶん途中で止められない。 「お前、つらくしちゃうかも……」 「いいよ、平気」 「気持ちよくなることだけ考えろよ」  自分にも言い聞かせるようにそう言って、ペニスを半分くらい引き抜いた。  腰の後ろがゾクッとする。  すぐに奥まで突き挿れる。 「んっあっ!……はっ、んんっあっん……あっ……ああっ!」  ピッタリと張りついた粘膜の擦れる感覚に、あっという間に理性を奪われてく。  代わりに俺を支配するのは、本能と……心の奥に閉じ込めた思い。 「深音……声出して。いっぱい」  俺が今抱いてるのは、セックスしてるのは深音だって……一瞬も忘れないようにしてくれ。 「っあ、ん……あ……んんっ! っふ、あ、あつ、い……はあっああっ……!」  深音の中を突く律動を速める。  腰を打ちつける度に増してく快感。 「っは……っく…っ」 「あ……んんっ! そう……ご……きもちいっ……っあん、あっ!」  目の前で揺れる深音の乳首を片手で捏ね、もう片方の胸にしゃぶりついた。  意識して動きの速度を落としても、最高潮に高まった快感は鎮まらない。もっとほしくて腰が勝手に抜き挿しを速めちゃう。  も……無理……あと保って秒単位……。  深音の甘い喘ぎ声が高く速く断続的になる。 「ふ……っん、あっ……あ、まっ……て、イキそ……ああっんっ、はっん……!」 「イッて……俺も、もう……限界」  しがみつくように、深音が俺の腰に脚を絡めた。  ペニスの根元に集まる快感が、熱い肉壁の中をさらに奥へと突き続けさせる。 「んっあ、イッちゃ……っあ! ちか、のせんぱ……ああっ! んやっイクッ! んっああッ……!!!」  ペニスを締めつける深音の中が、ビクビクと痙攣する。その衝撃を直に受けながらの奥への一突きで、俺もイッた。 「っう、くっ……ああ……っ!」  深音の痙攣が続く中、俺は精を放つのに合わせて腰を振ってから一気に脱力した。 「はぁ……」  荒い息を整えながら、深音の呼吸と身体が落ち着くのを待つ。 「っ……はぁっ……ん……はぁっ……っ……」 「大丈夫か? つらいとこ、ない?」  汗で頬に張りついた髪を脇に退ける俺に、深音が焦点を合わせた。 「うん……將梧は……」 「すげー気持ちよかった」 「私も」  微笑む深音に笑みを返し、軽くキスをした。  身体を起こして、硬度を失くしたペニスをズルリと引き抜く。 「んっ……ふぅ……將梧……私ね、イク時先輩のこと考えてた」  知ってる。  『睦乃(ちかの)先輩』って言ったから。 「うん。慰められた?」 「とっても。全部忘れて、ひとつだけ思い出せたから」 「何?」 「私は睦乃先輩が好き」  ハッキリと言い切る深音の瞳を見つめる。  嘘のない澄んだ瞳。  自分に正直な人間といると、自分自身もそうなりたいって思っちゃうことあるよね。   「俺は……」  深音が先輩の名を呼んだ時。  すべてを忘れて快感だけを追ってた身体が、深音の思いにつられて心とリンクした。 「涼弥が好きだ」  深音とのセックスでイク瞬間、心の中で涼弥を呼んだ。無意識に。  消せない思いは、見なくてもそこにあるって気づいた俺。  もう、認めるしかないよな。

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