44 / 246

17-3 考えないようにしてたんだ

「うん。俺も昨日気づいた」  (かい)がニヤリとして言った。 「真似すんな」  昨日と同じセリフを口にして、肩の力が抜ける。 「何で気づいた?」  一応、尋ねてみよう。新たな発見があるかもしれないし。  深音(みお)と沙羅が気づいたのは、俺をよく知ってるからってのが大きいとして。  昨日初めて会った凱は何故……って。  トイレ前で挙動不審になったから。  大切なヤツかと聞かれ、イエスと答えたから。  女子部のナンパスペースでの俺の様子から。  あー十分だったね。  ほかにもあるかな? 「トイレんとこで見つめ合ってた時、そんな感じだったからさー」 「どんな感じだよ。切ない瞳ってやつか?」 「んー……お前と涼弥、二人の世界。好きなのに好きじゃないフリし合って、つらくて苦しいのが気持ちいー感じ? あんま恋愛感情って自分にはねぇけどさー」  は……うん。  キミはそれでいい。キミの勘と洞察力は最高。  人を好きって感情はあったかくて心地いい。  だけど、同じカテにあっても。恋はつらくて苦しいもセットなのは真実、かも。 「まぁ、それで合ってる……かな」 「向こうもそーじゃん? つーより、涼弥のほうがつらいだろ。お前彼女いるし。あいつ、知らねぇんだからよ。お前も好きだって」 「な……に、は……!? 涼弥、も? つらい……!?」  え?え?って内容が重なる凱の言葉に、口がパクパクする俺。 「知らないって……当然、え? まさか、気づかれてない……よな?」 「うん。考えもしねぇんじゃねーの? お前が自分をーなんてさ。だから、つらいの。きっといっつも否定してるぜ? 自分がお前を恋愛対象に見てること」  思いきり眉を寄せた顔を凱に向けた。 「何だよ。お前も知んなかったとか言わねぇだろ?」 「知らないっていうか……そんなわけないっていうか……」    ほんと勝手だけど。  ほんの1日前に自覚するまで、考えないようにしてた。  涼弥が、俺を恋愛対象として見る可能性があるかどうか……を。  自分の気持ちを認めて、はじめてそれを考えた。  いや。  正直にいうと。考えることを、ようやく自分に許したんだ。  どうしてか?  俺自身が、涼弥をそういった目で見ないようにしてたから。  そのワケは、ひと言でいうと……怖かったからだ。  幼馴染みの親友をそんな目で見る罪悪感。  自分だけがそう思ってて、それを知られたらっていう恐怖。  だってさ。  自分を恋愛対象に見てる親友、ノンケなら一緒にいたくないだろ。  襲われたらって恐怖と嫌悪感はもちろん、応えられない申し訳なさもある。  拒否って傷つけたくないのに、拒否するしかない焦燥感。  一番は……。  失くした時の絶望感。  これが怖くて。  だから、考えなかった。  で、考えたら……。  期待した。  可能性はゼロじゃない……どころか、望みがあるんじゃないかって。  まぁ、沙羅に言われるまでは、具体的に考えるほどの期待はなかったんだけどさ。  昨夜から今日の昼までに、期待値は上がり。比例して、新たな恐怖要因と不安も急上昇。  俺、男とつき合えるのか?  すごく不安になった。  沙羅と話した時も自信なかったけど、御坂の話聞いて強く思ったんだよ。  自分が男も平気って確信持てるまで、涼弥に俺の気持ち知られないようにしよう……って。  だって、バカみたいじゃん?  俺だけが好きで涼弥を失うのは、もちろん。  お互いに好きなのがわかって、なのに俺が男は無理だったら。  涼弥を傷つけて、友達としての繋がりも失くす。  そんなの……マジで耐えられない。  だから、まだダメだ。  たとえ、涼弥が俺を……思ってくれてるとしても。  そう繰り返し自分に言い聞かせながら。  黙り込んだ俺が話し出すのを待っていた凱に、力ない笑みを向ける。 「ずっと……考えないようにしてたんだ」 「涼弥がお前を好きだと、なんか困んの?」 「困る」  即答して、思ってることの要点を凱に話した。  よけいな口を挟まずに俺の心情を聞き終えた凱が、小さな溜息をつく。 「お前の言うこと、理解出来るけどさー……」  けど……の先何?  キミの意見は……? 「心配し過ぎじゃねぇの? 好きんなったの男なら平気だろ」 「平気じゃないかもしれないから、ほんとに不安なんだよ」 「將梧(そうご)」  たっぷり5秒間。視線を合わせてから、凱が続ける。 「失くすの嫌だから。男とやれんのわかるまで、このままのほうがいーんだよな?」 「そう」 「男がダメだったら、気持ち隠して友達続けんの?」 「そう……」 「失くすよりいーから?」 「そう……だよ。何が言いたい?」 「お前が必死に隠しててもさー。もし、涼弥にバレたらどーすんの?」

ともだちにシェアしよう!