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23-2 エロモードは解除
「將梧 。先に身体流して来いよ。今新しいタオル出すから……つッ!」
凱 がベッドから降りようとして腰を押さえる。
「どうした? どっか痛い? まさか内臓がどうにかなったんじゃ……!?」
「んー平気。やり過ぎてちょっと腰が痛いだけ」
ニヤリと笑う凱の瞳はもう、いつもの瞳だ。
普段通り。通常モードの凱。
汗で乱れた髪で、裸で腰をさすっててももう……熱い瞳で俺をほしがった、あの凱じゃない。
今。それを淋しくは思わない俺ももう、凱をほしかった時と同じ瞳はしてないんだろうな。
それでいい。
俺と凱は、これがいい。
「あんなにイキまくって、ほんとに何ともないのか?」
「うん。お前よくあんだけ出来たねー。飛ぶほどよかった。サンキュ」
「俺もすごく気持ちよかった。ありがと……無理させてごめんな」
「無理なんかしてねぇよ。やりたくてやったの。お前もだろ?」
差し出されたタオルを受け取る。
「うん」
見つめ合う。
エロモードは解除された。
それを確認するように同時に微笑んだ。
「流してくる」
スッキリした心で、身体もサッパリさせるべくバスルームに行った。
部屋に戻ると。一気に薄暗さを増した空間で、窓辺に立つ凱が白く見える。
「お待たせ。暗くなったな。今何時?」
「んー6時くらい」
「6時!?」
そんなに……3時間近くやってたってこと? よく、その間ほぼずっと勃ってられたな。
エロモードはやっぱり非日常。
「腹減った?」
「そういえば、うん」
「飯、食ってく?」
「いや。よしとく。また今度」
セックスする前もそうだけどさ。
さすがに。
このあと。凱の家族と、しれっとした顔で一緒に夕ご飯食べるとか出来ないじゃん?
俺も凱も、小ざっぱりシャンプーの香りとかさせて?
怖い……修哉さんとか。家の中じゃ大鎌持ってないにしても。
悪いことしたわけじゃないのに、何でこういうのって後ろめたさを感じるんだろうな……俺だけ?
「お前も早くシャワーして来いよ」
「ん。待ってて」
ベッドの脇で、立ったまま髪を拭く。
素っ裸のままの凱がバスルームに向かうのを見ても、ドギマギしない。照れもしない。
照れないのはまぁ、率直にいえば見慣れたから……ていうか、セックスしたから。
あんないっぱいやって、今さら照れるとかないだろ。
ドギマギしないのはやっぱり、凱に抱くのは親愛の情だからか。
深音 も。
凱も。
俺にとって大切で好きな人間で……セックスした。恋愛感情じゃなく。
深音には頼まれて、凱には自分から頼んで。
結論。
俺、女とも出来るけど、男のほうが俄然 欲情する。
恋愛対象として好きになったのは涼弥だけだから……ゲイなのか俺?
恋愛って……初めてだな。
涼弥を好きなの自覚して、近くにいるとドキドキして。幸運なことに、向こうも同じ気持ちも持ってくれてる……らしい。
うまく話が運べば、思いが通じてつき合うってなって……。
セックスするの!? 涼弥と……!?
いや。問題はないよ?
男もオーケー。
鳥肌悪寒にならない。
凱にめちゃくちゃ欲情したし、男同士のセックスがどういうものかもわかった。
攻めが気持ちいいって知ったし、受けが気持ちいいのは見ててわかった。
想像以上に……ていうよりさ。
受けって本当に連続でイケるんだ!?
沙羅の言葉思い出して、ギリギリで抱くほうにしてもらったけど。
俺が抱かれてたら……どうにかなっちゃってたよね? きっと。
俺よりずっと身も心もタフそうな凱が。しかも、未熟な俺の攻めでああなるんだよ?
もし、当初の予定通り凱が俺を抱いてたら……そう思うとゾクッとする。
だから。
未来のリアルとして。フワフワぼかした都合のいい妄想じゃなく、予想すると……。
涼弥とやるのは……期待半分、怖気半分。
自分からセックスしたいって、今日初めて思った。
で、涼弥としたいって、初めて望んでる。
怖気づくのは、好きな相手だから。
好きな相手とするのは、何がどう違うのか。
今度、御坂にちゃんと聞こう。
あー顔が火照る。
カーテン……なびいてる。
風を求めて窓辺に立つ。
窓から見えるのは、薄暗い草原。草原の先は……空? 何もない? すごく遠くに灯りがあるような……。
そうか。崖になってるんだ。
この家……館って、なんか不思議な場所だな。
ここの住人の修哉さんと綾さん。
会ってみたいと思ってた、弟の烈。
住んでるとこ知って、家族に会ったら……凱が益々謎になったわ。
「あれ? 服着てねぇじゃん。誘ってんの?」
バスルームから全裸で出てきた凱が言った。
服……着るの忘れてたよ。バスタオルのままだ俺。
「そう。裸で待ってたっつったらさ。お前、まだやれるの?」
俺の返しに、凱が唇の端を上げる。
「その気になればな」
「タフだなほんとに。でも、誘ってない。今日はもう十分」
「うん。知ってる」
「お前のおかげで、男も平気ってわかった……ていうか俺、男のほうがいいかも。彼女よりお前のほうが興奮した」
「試したかいあったねー。もう不安じゃねぇだろ?」
「うん。凱……ありがとな。感謝してる」
「俺も楽しんでたじゃん? めいっぱい」
無邪気な凱につられて笑う。
「ならよかった。あと……涼弥のことなんだけどさ」
「あー先に服着ようぜ」
俺の声のトーンが変わったのを察してか。
凱の提案を受け、俺たちは服を着た。俺は制服。凱は、黒のパンツにカーキのシャツを羽織っただけのラフな格好。
「必要だって思ったら俺……涼弥に話す」
灯りが点けられて明るくなった部屋で。ローテーブルを挟んで向かい合って座ってから、口を開いた。
「お前とセックスしたこと」
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